【11月20日 AFP】2008年の世界金融危機以降、銀行業界に巣くう詐欺や虚言といった闇の部分が明るみに出ているが、そうした悪徳行為がどのようにして起こり、そしてマネービジネスで投機や資産運用などを行う業者らを不正直な行為に駆り立てる要因とは一体何だろうか──?

 スイス・チューリヒ大学(University of Zurich)の科学者チームはこれらの疑問を解明し、その解決策を探るために異色の心理学的実験を行った。この結果をまとめた研究論文が19日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

 今回の研究結果は、詐欺のリスクが銀行の文化に根差すものであるとする事例証拠に初めて客観的データを提供するものとなった。この業界文化の変革には、大きな困難を伴う可能性があるという。

 チューリヒ大学のミシェル・マレシャル(Michel Marechal)教授(実験経済学)は「研究結果は、銀行部門の社会規範が不正直な行為に対して通常より寛容性が高い傾向があることを示唆するものとなった。この傾向が同業界の評判をおとしめる一因になっている」と語る。

 研究チームは、大手国際銀行に勤務する銀行員128人とその他の銀行の80人を対象に実験を行った。参加者らの銀行業務経験は平均で11年半だった。

 参加者らの約半数は株式取引、プライベート・バンキング、資産運用などの基幹事業部門に勤務しており、残りは人事部などのサポート部門に所属している。

 今回、研究チームは参加者らの「正直度」を測る興味深いバロメーターを用意した。

 実験は、各参加者に「コイン投げ」を10回行ってもらい、その結果をオンラインで報告してもらうというもので、事前に決められた表か裏かの「正解」とそれぞれの結果が一致した場合、1回につき20ドル(約2400円)の賞金が支払われるというルールが設けられた。

 ただし、コインを投げる前に「正解」が毎回こっそりと伝えられるため、実験で検証されたのは、参加者らが結果を正直に報告するかどうかだった。

 さらに、銀行という職業の持つ競合的な性質を再現するため、ランダムに選ばれた別の参加者より表裏が一致する割合が低い場合には賞金を受け取れないことも参加者全員に告げられた。