【11月11日 AFP】14-15フィギュアスケートグランプリ(GP)シリーズ第3戦、中国杯(ISU Grand Prix of Figure Skating Cup of China 2014)の練習中に激しく衝突し、車いすで帰国したソチ冬季五輪金メダリストの羽生結弦(Yuzuru Hanyu)の事故について、日本スケート連盟(Japan Skating Federation)の対応に非難の声が上がっている。

 19歳の羽生は、練習でジャンプの体勢に入ろうとしていた際に、中国の閻涵(Yan Han、ハン・ヤン)と衝突して頭部から流血したが、命取りになる危険も顧みず、自らの意思で氷上に戻った。

 世界選手権覇者の羽生は、あごを数針縫い、頭部は医療用ホチキスで傷口をふさぐ必要があるほどのけがをしたが、医師の許可を得ると、ブライアン・オーサー(Brian Orser)コーチに「今はヒーローになる時ではない」と警告されながらも、フリースケーティング(FS)に臨んだ。

 羽生は2位という成績を残したものの、柔道の元日本代表である溝口紀子(Noriko Mizoguchi)氏は、同選手の滑走を許した連盟の判断を激しく非難した。羽生は10日に行われた検査の結果、頭部挫創などの診断を受けた。

 柔道の五輪メダリストである溝口氏は、AFPに対し「日本スケート連盟の対応は無責任でした」と述べた。

「脳振とうの恐れがあり、セカンドインパクトによる脳損傷の危険もあります。羽生選手の意思を尊重したというのは下手な言い訳にすぎません。選手が死んでしまってもいいのでしょうか?ラグビーや柔道では、脳振とうの恐れがある場合は選手の安全が最優先です」

■死のリスク

 日本スケート連盟はAFPに対し、羽生が脳振とうを起こしていなかった事実を確認していたと述べたが、溝口氏は、スケート連盟が賢明な対応をするべきだったと主張した。

 溝口氏は、米国のバラク・オバマ(Barack Obama)大統領がホワイトハウスで脳振とうをテーマにした会議を主催したことを挙げ、「日本は、スポーツにおける脳振とうの問題について、世界から遅れを取っています。フィギュアスケートのように、相手と接触したり激しく戦ったりしない競技では、特にそうです」と述べた。

「フィギュアスケートは、ファンから花束やぬいぐるみが投げられるのを見ても分かる通り、ショービジネス化しています。羽生選手のコーチも、彼を演技させなければというプレッシャーを感じていたのでしょう。しかし、オバマ大統領が問題提起している機運の中で、日本スケート連盟が無関心でいられることは驚きです」

(c)AFP/Alastair HIMMER