【10月22日 AFP】韓国の農場で働く外国人労働者たちが、搾取を助長する「恥ずべき」労働許可制度の下でまん延する虐待の犠牲になっているとする報告書を、国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)が20日に発表した。

「苦い収穫(Bitter Harvest)」と題された報告書は、韓国各地の農場労働者数十人に行った聞き取り調査に基づいたもので、脅迫行為や暴力、長時間労働、悲惨な住環境が横行している実態を描き出している。

「(韓国)当局は、搾取と強制労働のための人身売買をまん延させる恥ずべき制度を作り上げている」。アムネスティでアジア太平洋地域の移民の人権問題を担当するノーマ・カン・ムイコ(Norma Kang Muico)調査官はこのように指摘し、「もし韓国人が同じような虐待の連鎖の中に追い込まれたならば、間違いなく激怒の声が上がるだろう」と述べた。

 2013年時点で、韓国には25万人の外国人労働者がおり、うち2万人が農業に従事している。カンボジアやネパール、ベトナムなどからの労働者が多い。こうした外国人労働者は、韓国政府の「雇用許可制度(Employment Permit SystemEPS」の下で雇用契約を結んでいる。

 このEPSについてアムネスティの報告書は、極度に雇用主に有利な制度で、外国人労働者が十分な法的保護もないまま脆弱な立場に追い込まれ身動きが取れなくなっていると批判している。

■改善要求を当局が妨害した例も

 例えばEPSでは、雇用主がいつでも労働者を解雇できる一方、外国人労働者は雇用主が解雇証明書に署名した場合にしか転職が認められない。労働者の多くは韓国へ来るために祖国で多額の借金をしており、失職の代償が甚大なことから、搾取されてもほとんど抵抗できない。

 また報告書は、韓国政府が搾取にある程度連座している可能性も疑っている。労働環境の改善を要求しようとした労働者たちが、当局から妨害を受けたというのだ。

 あるカンボジア人労働者(25)はアムネスティの調査に対し、自分が雇い主に殴打されている様子を撮影した携帯電話の録画映像を持って、政府の職業センターに行ったと語った。だが「福祉士には、キャベツの切り方を間違った私が悪い、早く帰って(雇い主に)謝りなさいと言われた」という。

 急速に高齢化と若者の都会進出が進む韓国では、農業や漁業、建設業の労働力不足を補うために外国人労働者を頼る傾向が強まっている。アムネスティは韓国政府に対し、労働時間や休暇日数など労働者の基本的人権を保証するとともに、雇用主が発行する解雇証明書がなくても転職を可能にするよう求めている。

 韓国のEPSをめぐっては、国連の人権問題に関する特別報告官も10月初旬に同様の懸念を示し、低賃金で単純労働に雇用される外国人労働者が増加し「深刻な問題」に直面していると警告している。(c)AFP