【10月11日 AFP】イスラム過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」は10日、トルコと国境を接するシリア北部アインアルアラブ(Ain al-Arab、クルド名:コバニ、Kobane)のクルド人部隊の司令部を制圧した。国連特使は、ISがアインアルアラブを奪取すれば、数千人規模の虐殺が起きるだろうと警告した。

 ISの前進により、戦線はトルコとシリアの国境からわずか1300メートルにまで近づいた。

 非政府組織(NGO)「シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)」によると、ISは現在アインアルアラブの4割を掌握している。

 同監視団の幹部ラミ・アブドル・ラーマン(Rami Abdel Rahman)氏はAFPの取材に対し、「司令部を奪取したことで、ISは町の北にあるトルコとの国境検問所への進攻が可能になるだろう」と述べ、「それが成功すれば、アインアルアラブ内のクルド人部隊が完全に包囲される」と語った。

 戦闘は激化しており、シリア人権監視団によるとISの戦闘員1人がクルド人部隊司令部の西側で自動車を使った自爆攻撃を行い、2人のクルド人戦闘員が死亡。また町の南部ではISによる待ち伏せ攻撃でクルド人10人が死亡したという。

 米軍は、シリア領内で9日と10日に新たな空爆を9回実施したと明らかにした。シリア人権監視団は、10日午後にクルド人部隊司令部近くで4回の空爆が行われたと発表した。

 シリア内戦の和平を仲介する国連(UN)のスタファン・デミストゥラ(Staffan de Mistura)特使は、アインアルアラブの中心部には主に高齢者の約700人がおり、アインアルアラブとその周辺を合わせれば今なお約1万2000人の住民が残っていると指摘し、ISが町を陥落させれば、「ほぼ確実に虐殺されるだろう」と述べた。

 デミストゥラ特使はトルコに対し、「あらゆる手段を使って、有志国による(ISへの)抑止行動を自国領土から支援してほしい」と述べて、紛争に対して通常は中立の立場を取る国連の代表としては異例の呼びかけを行った。(c)AFP/Fulya Ozerkan with Sara Hussein in Beirut