【9月16日 AFP】第2次世界大戦(World War II)中にナチス・ドイツ(Nazi)によるユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)が行われたアウシュビッツ(Auschwitz、現ポーランド領)の強制収容所で、少なくとも30万人の殺害に関与したとして独当局は15日、当時ナチス武装親衛隊(Waffen SS)の隊員だった93歳の男を殺人の共犯で起訴した。

 起訴内容は、ナチス・ドイツ占領下のポーランドにあった同収容所に1944年の5月~7月にかけて強制移送されたとみられる約42万5000人のうち、ガス室で殺害されたとされる最低30万人に関連したものとなっている。

 ドイツ北部ハノーバー(Hannover)の検察当局は、男の役割について、「強制収容所における大量虐殺の痕跡を隠ぺいする」目的で、犠牲者たちの所持品が後から到着する新たな被収容者の目に触れないよう隠すこと、さらには被収容者たちの所持品から奪った紙幣を数え、ベルリン(Berlin)の親衛隊本部へ送ることだったとしている。

 ナチスの戦争犯罪について捜査している独当局は昨年、アウシュビッツ収容所の元要員30人について、起訴勧告とともに記録を独連邦警察庁に送致している。

 ナチスの戦犯についてドイツは過去60年以上にわたり、その個人が直接残虐行為を犯した証拠が示された場合に限り起訴する方針を維持してきた。しかし11年に強制収容所の看守だったジョン・デミャニューク(John Demjanjuk)被告(12年に死亡)にユダヤ人虐殺の共犯で禁錮5年の刑が下されたことが判例となり、収容所関係者全ての裁判が開かれる可能性が開けた。(c)AFP