【9月12日 AFP】朝日新聞社の木村伊量(Tadakazu Kimura)社長は11日、記者会見を開き、自社報道におけるいくつかの重大な誤りについて読者に謝罪し、東京電力(TEPCO)福島第一原発事故の際に原発の所員らが所長の待機命令に違反して逃げ出したような印象を与えたとする記事を取り消した。

 朝日新聞は、政府が非公開としていた福島第一原発事故の政府事故調査・検証委員会が作成した吉田昌郎(Masao Yoshida)所長(昨年7月に死去)に対する聴取結果書、いわゆる「吉田調書」を入手したとして今年5月20日に掲載した記事で、東日本大震災発生から4日後の2011年3月15日朝に「福島第一原発にいた東電社員らの9割にあたる約650人が吉田所長の待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発に撤退した」と報じた。政府は11日、吉田調書を公開したが、所員が吉田所長の命令に違反したことを示す記述はなかった。

 木村社長は「読者及び東電福島第一原発で働いていた所員の方々をはじめ、みなさまに深くおわびいたします」と謝罪したうえで、自らの進退について、「抜本改革など再生に向けておおよその道筋をつけた上で、すみやかに進退について決断します」と述べた。

 また同じ記者会見で木村社長は、日本が戦時中に朝鮮半島の女性を強制連行して慰安婦にしたとされる問題に関する32年前の記事について「誤った記事を掲載したこと、そしてその訂正が遅きに失したことについて読者のみなさまにおわびいたします」と謝罪した。

 この記事は、慰安婦にする目的で韓国・済州(Jeju)島で女性たちを強制連行したとする自称文筆業の日本人男性の証言を引用していたが、この証言は他紙や研究者たちの独自調査によって疑問視されていた。朝日新聞は今年8月、この1982年の記事とそれに続く同紙の報道が、この男性の「虚偽」の証言に基づいていたことを認めたが、この件で同社が謝罪したのは11日の木村社長の会見が初めて。

 朝日新聞が8月に誤りを認めたことで、戦時中の前線の売春施設に「性的奴隷」は存在せず、多くの慰安婦たちは高給を受け取る売春婦だったと主張する国内の保守派は勢いづいている。安倍晋三(Shinzo Abe)首相は11日、出演したラジオ番組で、慰安婦問題関連の誤った報道によって「多くの人が苦しみ、国際社会で日本の名誉が傷つけられた」と述べた。(c)AFP