【9月10日 AFP】東アジア諸国では教育への公的支出が少ないことから、子どもの大学卒業までにかかる学費が保護者の大きな負担になっていると経済協力開発機構(OECD)が報告した。

 OECDの報告書「図表でみる教育(Education at a Glance)」によると、数学を中心に東アジア諸国の子どもたちの成績は向上しているが、国民の高学歴化は社会全体の利益であるにもかかわらず、成績向上の頼りとなっているのは料金の高い塾通いや家庭教師だという。

 OECDのアンドレア・シュライヒャー(Andreas Schleicher)教育局長は、東京を拠点とするジャーナリストらとのテレビ会議で、東アジア各国の政府の共通課題は「あらゆる背景を持つ人々の中から有能な人材の高等教育への参加を可能にする、より良い公的支援体制の構築だ」と述べ、東アジア各国では「教育への予算支出が比較的限られており教育費、特に高等教育にかかる費用が、親や家族の大きな負担となっているのが慢性的傾向だ」と指摘した。

 教育課程全般で、日本では30.5%、韓国ではこれを上回る37.2%の教育費を民間部門が支出している。比較すると、OECD平均は16.1%。さらに欧州諸国では公的部門の教育費負担率が高く、スウェーデンでは国の負担が97.2%に達している。

 高等教育(大学、短大)だけをみた場合では、民間部門の負担率のOECD平均が30.8%であるのに対し、日本と韓国はそれぞれ65.5%、73%となっている。

 一方、報告書が取り上げている12年の各国の子どもたちの成績では、東アジア諸国は教育費の公的負担率が比較的低いにもかかわらず、15歳の数学の成績で他地域よりも高い成績を収めている。数学の成績が世界で最も良かったのは中国・上海(Shanghai)の生徒で、次いでシンガポール、香港、台湾、韓国の順で後に続いた。

 シュライヒャー局長は東アジア地域のこうした傾向について、必ずしも公共支出に反映されていないとしても、社会が教育に置いている価値は、生徒たちの成績結果に明らかに恩恵となって現れていると述べた。同氏は「公的な支援制度が弱い一方で、さまざまな背景を持つ子どもたちが教育に参加し、好成績を収めている。これは世界の他の地域以上に、家族や親、教師やあらゆる人が教育を重視している結果だと思う」との見解を示した。(c)AFP