【9月10日 AFP】ハクトウワシやカッショクペリカンなどを含む北米の象徴的な鳥類数百種が、気候変動により生存の脅威に直面しているとの報告書が9日、米環境保護団体から発表された。

 環境保護団体「全米オーデュボン協会(National Audubon Society)」が発表した報告書によると、米国とカナダに生息する鳥類種の半数以上に相当する計314種は、地球温暖化の進行に伴い、重要な生息地や食料源が失われているという。

 また、鳥類の保護を目的とした「Committee of the North American Bird Conservation Initiative」発行の「米国版鳥類白書2014(State of the Birds 2014, USA)」と題された年次報告書にも、1960年代以降、米ユタ(Utah)州、アリゾナ(Arizona)州、ニューメキシコ(New Mexico)州などの砂漠や乾燥した地域に生息する鳥類の最大46%が姿を消したと記載されている。

 同白書によると、ヒガシマキバドリやコメクイドリなどの鳥は1968年以降、個体数が約40%減少したが、1990年以降は「草原鳥類の保護に対する多大な投資」により、その個体数は一定の状態を保っているという。それでも、住宅地などでよく見かける鳥の個体数は減少傾向にあり、沿岸湿地で繁殖と捕食を行う鳥も同様に苦境に陥っているとされる。

 米スミソニアン協会(Smithsonian Institution)のウェイン・クラフ(Wayne Clough)会長は、米首都ワシントン(Washington D.C.)で開かれた今回の調査結果を議論するためのイベントで「現在、鳥類種の一部は脅威に直面しており、私はこれを重要なメッセージと捉えている。『科学と保全』を適切に利用できれば、この事態は覆すことができる」と語り、「われわれの前には課題が山積みになっている」と続けた。

 オーデュボン協会の報告書が明らかにしたところによると、米国の国鳥、ハクトウワシの夏季の生息域は今後65年間で75%近く縮小する恐れがあり、また米ミネソタ(Minnesota)州の州鳥ハシグロアビやメリーランド(Maryland)州の州鳥ボルチモアムクドリモドキなどの鳥は、温暖化が原因で巣作りや繁殖が困難になる可能性がある。

「この他、危機にさらされている州鳥としては、米ルイジアナ(Louisiana)州のカッショクペリカン、ユタ(Utah)州のカリフォルニアカモメ、バーモント(Vermont)州のチャイロコツグミ、アイダホ(Idaho)州とネバダ(Nevada)州のムジルリツグミ、ペンシルベニア(Pennsylvania)州のエリマキライチョウ、ニューハンプシャー(New Hampshire)州のムラサキマシコなどが挙げられる。首都ワシントンのモリツグミも同様」と同報告書は指摘している。

 オーデュボン協会役員の一人で、ノーベル賞受賞者のテリー・ルート(Terry Root)米スタンフォード大学(Stanford University)教授は「今後、進行する気候変動の影響を自宅の庭で目にすることになる。このような厳しい現実を突きつける警鐘を無視することはできない」と述べている。

 米スミソニアン渡り鳥センター(Smithsonian Migratory Bird Center)のピート・マーラ(Pete Marra)所長は、「羽のある友」として親しまれてきた鳥の個体数減少の最も大きな要因として、生息地の喪失、都市の乱開発、食料源の不足、公害などが挙げられるとした。(c)AFP/Kerry SHERIDAN