【9月2日 AFP】米国が、イスラム教スンニ派(Sunni)の過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」や国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)に対する「ソーシャルメディア戦争」に乗り出している。敵意むき出しの言葉に皮肉を織り交ぜ、武装勢力をあざ笑うことで、思想戦に勝利しようとの試みだ。

 マイクロブログのツイッター(Twitter)や交流サイトのフェイスブック(Facebook)、動画共有サイトのユーチューブ(Youtube)といったソーシャルメディア上で「デジタル戦」を展開しても、イスラム武装組織との戦いにおける特効薬にはなり得ないことは、外交官や専門家らが誰よりも先に認めている。だが、米当局は、イスラム世界の若者たちの関心をISやアルカイダといった過激派組織から引き離す上で、ソーシャルメディアの「戦場」としての重要性が増しているとみている。

 過去1年半にわたり、米当局はソーシャルネットワーク上に多数存在するイスラム過激派関連のアカウントを標的とし、コメントや写真、動画を投稿し、しばしば米国に異義を唱える者たちと激しい応酬を交わしてきた。

 米国務省内には2011年に「対テロ戦略的コミュニケーション・センター(Center for Strategic Counterterrorism CommunicationsCSCC)」が創設され、翌12年にツイッターのアラビア語アカウント(@DSDOTAR)を開設。その後、ツイッター英語版アカウント(@ThinkAgain_DOS)を立ち上げたのに続き、今週にはフェイスブックにも公式ページ(https://www.facebook.com/ThinkAgainTurnAway)を開設した。

■「小競り合い」を積み重ねる「サイバーゲリラ戦」

 米国務省のある高官は、この戦略をサイバー空間でのゲリラ戦にたとえる。

「特効薬などではない。こんなことをしても無駄だという意見から、過激派を屈服させる魔法だという見解まであるが、言い過ぎだ。どちらでもない。これは、時間をかけて日々着実に押し返す取り組みなのだ」

「これは無数の小競り合いで、大戦闘はない。米国は大きな戦争が好きだが、これは違う。いわばゲリラ戦のようなものだ」

 8月19日、米国人ジャーナリストのジェームズ・フォーリー(James Foley)氏がにISに処刑される場面を撮影した動画がインターネット上に出回り、米当局のサイバー戦闘員たちは激高した。CSCCではツイッターで展開する作戦を強化し、フォーリー氏追悼のメッセージや世界中のメディアのイスラム過激派分析、漫画や画像などを次々と投稿した。

 米国務省は先週、「ホワイトハウスにアッラー(イスラム教の唯一神)の旗を揚げる」と宣言したことのあるアブ・ムサ(Abu Moussa)らISのメンバーが、シリアで死んだとツイートした。また、イラクでIS戦闘員22人を殺害したクルド系少数宗派ヤジディ(Yazidi)教徒の戦闘員を祝福するツイートも流した。

 より厳粛な外交的なトーンを維持し、シリアのバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領とISの最高指導者アブバクル・バグダディ(Abu Bakr al-Baghdadi)師が廃虚の前に並んで立つモンタージュ写真を投稿したこともある。その写真のキャプションには「バグダディとアサドは、競り合ってシリアを滅ぼそうとしている」と書かれていた。