【8月14日 AFP】エジプトでのミイラの作製が、従来の通説より1000年ほど早く始まっていた可能性が出てきた──。13日の米オンライン科学誌プロスワン(PLOS ONE)に掲載された論文によると、博物館の収蔵物を調査した結果、保存目的で死体を布で包む習慣が行われていた時期が特定できたという。

 英オックスフォード大学(University of Oxford)などの研究チームは10年に及ぶ研究の末、死体包装用に使われた樹脂と亜麻布の起源が、紀元前3350年から4500年にさかのぼることを初めて明らかにした。

 歴史学者らの間では長年、エジプトのミイラ製作の習慣が始まったのは紀元前2500年頃と考えられていた。

 研究チームは、英国の博物館にあるエジプト関連の収蔵品を最新の科学分析法を用いて調べ、当時使用されていた保存剤の成分比率が、後の時代のミイラ作製で使われたのと同じであることを発見した。

 研究チームは、ガスクロマトグラフィー質量分析法などの化学分析技術を用いて、その当時に死体を保存するために使われた天然物質を特定した。

 論文では「調合された保存剤の『香油』は、植物油や獣脂の『ベース』で大部分が構成されていた」と述べられ、針葉樹樹脂、芳香植物抽出物、ろう、植物性のゴムや糖質なども少量ずつ使われていたことも明らかになったとしている。

 さらに「各種抗菌物質も含有しており、その使用比率は、(ミイラ作製で)技能的にピークに達した約2500~3000年後の古代エジプトで使われたものと同じだった」と論文は指摘している。

 今回の研究プロジェクトには、オックスフォード大の他、英ヨーク大学(University of York)と豪マッコーリー大学(Macquarie University)の研究者らが参加した。

 研究チームが調べた亜麻布の断片は、上エジプト(Upper Egypt)バダリ(Badari)地方のモスタゲッダ(Mostagedda)遺跡にある、これまで発掘された中で最古の古代エジプト墓地に埋葬されていた遺体から採取されたものだ。(c)AFP