【8月11日 AFP】イスラム教スンニ派(Sunni)の過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」が過去数週間にイラク北部の町などを相次いで武力制圧しているのを見ると、ISは数的に相手を圧倒しているように感じられる。

 6月9日の襲撃でイラク政府軍を敗走させ、イラク第2の都市モスル(Mosul)を制圧したISは、先週から再び攻勢をかけ、各地の戦線でクルド人自治区の民兵組織部隊を度々撃退している。

 だがISの部隊の規模は比較的小さく、その力は数ではない。軍事専門家が見た、ISが武力により勢力拡大を続ける理由5つを以下に挙げる。

■兵器の接収

 ISは、制圧した相手部隊から接収した戦車や高機動多目的装輪車両、ミサイル、その他の重火器などを活用している。

 2か月前のISの攻勢でイラク政府軍が置き去りにした兵器は、ISの能力を大きく変化させた。これらの兵器は米国製が多い。

■シリアでの経験

 ISは以前からイラクに足場を持っていた。だが現在の姿に変わったのは、隣国シリアでの戦闘を通じてだった。

「シリアでの3年間の戦闘はISにとって、訓練と学習のまたとない機会となった」と、米国を拠点とする情報コンサルティング会社のソウファン・グループ(Soufan Group)は最近の声明で述べている。

■戦闘の選択

 ISは鋭い洞察力で戦闘を選択してきた。ISが力を注ぐのは、支持の得られるスンニ派地域での戦闘や、重要なインフラ拠点、防衛能力の低い施設などの標的だ。またISは不必要な犠牲者を出さないことで勢いと内部の結束を保っている。

■効果的なプロパガンダ

 ISは抵抗を受けずに都市などを制圧するため、「恐怖」を用いてきた。ISは切断された頭部やバラバラの遺体などの画像をインターネットなどに投稿し、急進的な若者にアピールする一方で敵側に恐怖を植え付けてきた。

「(ISは)人間の所業と思えぬ非道の影を造り出している」とソウファン・グループのパトリック・スキナー(Patrick Skinner)氏は語る。先週、ISがあと数時間でイラク北部の都市シンジャル(Sinjar)に到着すると警告すると、恐慌状態となった住民はシンジャルから避難した。

「PRと脅迫はISの重要な戦術だ」と、危機管理会社AKEグループ(AKE Group)のジョン・ドレーク(John Drake)氏は語る。「接収した兵器を全て使うかどうかにかかわらず、ISはそれらを撮影し、プロパガンダに利用する」

■弱い敵

 ISが強力に見える最大の理由は、相手側勢力の弱さだろう。

「クルド人自治区の民兵組織部隊はイラク国内の基準では比較的優れているとされているが、彼らは軽装備の歩兵部隊だ。サダム・フセイン(Saddam Hussein)元大統領と戦った経験のある人員はいなくなり、若者たちに置き換わっている」と、米シンクタンク「戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)」のアンソニー・コーズマン(Anthony Cordesman)氏は指摘した。(c)AFP/Jean Marc MOJON