【6月21日 AFP】宇宙の起源とされる大爆発「ビッグバン(Big Bang)」の直後に宇宙が急膨張し、その際に生まれた重力波を初めて観測したと3月に発表した米天体物理学研究チームが、この研究結果について間違っていた可能性があると19日、明らかにした。米国物理学会(American Physical Society)の学会誌「Physical Review Letters」に論文を発表した。

 物理学者アルバート・アインシュタイン(Albert Einstein)が一般相対性理論でその存在を予言していた重力波の観測が正しければ、宇宙は138億年前の誕生時に一瞬のうちに急膨張したという理論を裏付けることになる。

 いわゆる「インフレーション理論」の最初の直接的証拠とされる重力波の発見は、米ハーバード・スミソニアン天体物理学センター(Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics)の専門家チームによって3月に発表された。重力波の観測は、南極に設置されたBICEP2で行われた。

 研究チームは、重力波がビッグバンから38万年後の宇宙に広がったもので、BICEP2で捉えたと主張していた。

 しかし、19日に発表された論文の中で同チームの研究者らは、重力波の観測をめぐり疑問を呈していた他の科学者が述べているように、「われわれのモデルは、外部公開データを十分に踏まえておらず、余分な信号すべてが塵から放出されているという可能性を排除していない」とした。

 これまで米プリンストン大学(Princeton University)の理論宇宙物理学者、デービッド・スパーゲル(David Spergel)氏は、BICEP2で捉えた重力波について、本当に宇宙の誕生時の最初の瞬間に出たものなのかと疑問を投げかけていた。

 同氏はAFPの取材に対し、「銀河の塵は偏光照射をすることが分かっており、それは多くの領域で起きている。われわれが論文で指摘したのは、彼らが捉えたものは重力波でも見られるが、銀河の塵にも見られるということだ」と述べた。

 この問題について同氏は、今後数週間に欧州宇宙機関(European Space AgencyESA)のプランク宇宙望遠鏡で研究を進めている別チームの研究結果で落着するだろうとした。(c)AFP