【6月19日 AFP】ドイツ南部のアルプス(Alps)山脈にあるリーゼンディンク(Riesending)洞窟の地下1000メートル地点で落石に遭い、頭部に重傷を負った状態で11日間にわたって動けずにいたドイツの洞窟探検家が19日、救助隊員700人以上による「驚異的な」救助活動の末に助け出された。

 ヨハン・ウエストハウザー(Johann Westhauser)さん(52)は8日、ドイツで最も深く長く、迷路のように複雑に入り組んだリーゼンディンク洞窟を調査中に負傷。暗く冷たい洞窟内から出られずにいた。しかし、5か国が携わった困難かつ忍耐を要する救助活動により、事故から274時間ぶりに担架で地上に運び出され、ヘリコプターで病院に搬送された。

 洞窟内の気温は氷点下に近く、通信状況も劣悪だった。救助隊は危険と隣り合わせの中で、1週間近くかけて曲がりくねったトンネルや広間、地底湖や冷たい水しぶきをあげる滝が網の目状につながった洞窟を慎重に前進した。

「アルプス救助の歴史に新たな一ページが刻まれた」と、山岳救助隊のノーバート・ハイラント(Norbert Heiland)隊長は語った。当初、救助は「絶対に不可能」と思ったという。

 ウエストハウザーさんの救助活動にはドイツ、オーストリア、スイス、イタリア、クロアチアから洞窟探査の専門家や医師団、救急隊など総勢728人が結集。洞窟内には救助隊員202人が送り込まれた。救助ミッション責任者のクレメンス・ラインドル(Klemens Reindl)氏は、「とてつもない任務」だったと振り返った。

 ラインドル氏によると、ウエストハウザーさんは頭蓋骨と脳に外傷があり、ドイツ国内の病院に警察当局のヘリコプターで搬送された。「現状は安定した状態」にあるという。

 リーゼンディンク洞窟の名は「巨大なもの」という意味。1995年に発見され、全長19キロ以上、深さは1150メートルで、2002年になるまで詳細は謎のままだった。(c)AFP/Frank ZELLER