【6月15日 AFP】スウェーデン第2の都市、イエーテボリ(Gothenburg)にあるトヨタ自動車(Toyota Motor)の事業所で組立工として働くロバート・ニルソン(Robert Nilsson)さん(25)は、労働時間の短縮と高い生活水準の両方を実現する上での手本となるかもしれない。

 ニルソンさんは他の社会人と同じ時間に起床するが、職場へ急ぐことはしない。ジョギングしたり、朝食を楽しんだりと、のんびり過ごす。正午にようやく職場に到着し、午後6時には仕事を終える。ニルソンさんは「友人たちは僕のことを嫌っている。6時間しか働かないのだから8時間分の給与をもらうべきでないと思っているんだ」と話した。

 スウェーデンを初めて訪れた人は、ゆったりした豊かさに驚き、経済的な余裕と時間的な余裕の両方をどうしたら手に入れることができるのだろうと不思議に思う。エコノミストたちは、新しい技術に素早く適応できる、生産的で教育水準の高い労働力がその理由の1つだと言う。

 経済協力開発機構(OECD)によれば、スウェーデンの2012年の1人当たりの総実労働時間は1621時間だった。オランダ(1381時間)と比べると多いが、英国(1654時間)や米国(1790時間)よりも少なく、チリ(2029時間)、メキシコ(2226時間)を大幅に下回る。

 スウェーデンでは、労働時間の短縮が生産性向上につながることを実証しようとする動きが一部でみられる。社会民主労働党主導のイエーテボリ市当局は労働時間の短縮が生産性に及ぼす影響を評価する試みを7月1日から実施する。

 高齢介護課の職員のうち、あるグループは1日の勤務時間を6時間に短縮し、別のグループはこれまで通り8時間の勤務を続ける。1年後、結果を分析し、勤務時間の短縮によって病欠の減少などの形で十分な経費節減効果が表れるかどうかを調べ、時短勤務を恒久措置として認め、他の課でも導入するかどうかを決める。

 これまでのところ、この試みは公務員のみが対象だが、市会議員のマッツ・ピルヘム(Mats Pilhem)氏はスウェーデン国民全体が労働時間短縮に向かっていると明言する。