【6月15日 AFP】就労が保障されず、雇用主から要請があった時にだけ労働力を提供する待機労働契約、いわゆる「ゼロ時間契約」が広まっている英国で先月、政府が発表した新たな案が、大きな論争を呼んでいる。デービッド・キャメロン(David Cameron)首相率いる与党は、失業給付の受給者がゼロ時間契約での就労を拒否した場合、給付を数か月にわたって一時停止することを提案している。

 待機労働契約で就労している労働者は、国内に約140万人。しかし、労働組合はこうした労働者らが雇用形態を強要されていると主張。激しい反対運動を展開している。

 英国で待機労働契約が導入されたのは1996年。当時のジョン・メージャー(John Major)首相と与党・保守党が柔軟な働き方を求める学生や季節労働者の雇用を容易にすることを目的に採用した。

 そして現在、同国ではファストフード大手マクドナルド(McDonald's)やアイルランドの格安航空会社ライアンエア(Ryanair)の従業員、さらにはバッキンガム宮殿(Buckingham Palace)の職員の採用にまで、この労働形態が採用されている。英紙ガーディアン(Guardian)の調査によれば、英政府も待機労働契約で職員25万人を雇用している。

 英統計局(Office for National Statistics)が今年1~2月の2週間に実施した調査では、待機労働契約を導入していることを認めた雇用主は全体の約13%。観光業と飲食業、健康産業では、その割合は50%に達した。労働市場の柔軟性拡大と経済活性化を目指す欧州連合(EU)加盟各国からは、英国のこうした状況に高い注目が集まっている。