【6月6日 AFP】「私の年になると人生は少し退屈になりがちだ。だからワクワクすることは全力でつかみ取らねば!」

 こう語ったのは、第2次世界大戦のノルマンディー(Normandy)上陸作戦決行日「Dデー(D-Day)」から70年の記念日を翌日に控えた5日、上空5000フィート(約1500メートル)の航空機から飛び降りるという記念式典に参加したDデー帰還兵のジョック・ハットン(Jock Hutton)さん(89)。

 第2次世界大戦、英軍落下傘部隊第13大隊の一員としてノルマンディー上陸作戦の第1陣に参加し、ランビル(Ranville)村郊外に降下したスコットランド出身のハットンさんはこの日、70年前と同じランビル村郊外の野原にパラシュートで着地した。

 今回のスカイダイビングイベントはハットンさんの年齢を考慮し、英軍落下傘部隊のレッドデビルズ(Red Devils)隊の協力の下、タンデム(2人組)で行われた。約1時間行われた式典には英米仏加の兵士ら300人が参加した。

 70年前に19歳で飛び降りた時よりも10倍も高い高度だったという。ハットンさんは「(Dデーは)とても低い高度から飛び降りた。今みたいな空中でのゆったりした時間はなかった。地面に激突したよ」と語った。

 ハットンさんは、式典を観覧していた英国のチャールズ皇太子(Prince Charles)の目前に着地し、汚れを払い落としてからチャールズ皇太子と握手した。

 第2次大戦後、ローデシアSASに40年間所属したハットンさんは、その後の取材で「スカイダイビングは怖かったか」との質問に目を大きく開き、「あなたね、私は人生の中で恐怖したことが一度もないのですよ。私はたちの悪いスコットランド人なんでね」と語った。

 現場では多くの帰還兵たちがハットンさんの降下を見つめていたが、妻のドリーンさんは全く感銘を受けるそぶりを見せなかったという。

「妻はそっぽを向いた」とハットンさん。「軍務44年で、さすがに飽き飽きしたんだろう」

 Dデー後、ハットンさんは6月22日までノルマンディー戦線に参加したが、負傷により英国に帰国した。回復後は西部戦線に加わり、ハットンさんの部隊はフランスからオランダへ進んだ。

■戦友との再会

 ランビルの降下地点から立ち去ろうとしたハットンさんは、89歳の戦友、バート・マーシュさんに出会った。2人は、共に戦ったフランスのアルデンヌ(Ardennes)で10年前に行われた追悼式典で会ったきりだった。

「バーティ、この老いぼれめ。死んだと思ってたぞ!」とハットンさんは大声を上げ、2人は抱き合った。(c)AFP/Alice RITCHIE