【5月21日 AFP】南仏カンヌ(Cannes)で開催されている第67回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)で20日、コンペティション部門に出品されている河瀬直美(Naomi Kawase)監督(44)の映画『2つ目の窓(Still the Water)』が上映された。「愛」と「死」と「性」を叙情詩的な視点で捉えた本作について、河瀬氏は最高賞パルムドール(Palme d'Or)に値する「自らの最高傑作」と呼んで自信をのぞかせている。

 女性として唯一、パルムドールを受賞しているニュージーランドのジェーン・カンピオン(Jane Campion)監督が審査員長を務める今年、コンペティション部門に出品している女性監督は2人。そのうちの一人が、同映画祭で過去に2度受賞経験があり、昨年には日本の映画監督として初めて同映画祭の審査員を務めた河瀬監督だ。

『2つ目の窓』では、奄美大島を舞台に、そこに暮らす10代の主人公の杏子(きょうこ)と界人(かいと)のそれぞれの家族をめぐるさまざまな思いと、目覚めたばかりの性への葛藤が交錯する。息をのむような映像で深い官能の世界を描き出した本作は、破壊と死、そして自然と性が持つ救済の力に焦点を当てている。

 映画祭開幕前に日本の報道陣に対して「これが間違いなく自分の最高傑作」と語り、最高賞獲得への強い意欲を示した河瀬監督。同作品については、2011年の東日本大震災が製作のきっかけになったとしており、自然は時として猛威を振るうものだが、その美しさは人々の心を奪い、そしてその脅威となり得る自然のそばで生きることを人は選択してしまうと語っている。

■割れた評価

 本作の評価については、賛否両論が寄せられている。米映画情報サイトの「インディーワイヤ(Indiewire)」が受賞する可能性の高い作品と位置づけた他、仏映画関連サイト「アロシネ(AlloCine)」も「パルムドール候補の一つ」とした。

 一方、米エンターテインメント情報誌ハリウッド・リポーター(Hollywood Reporter)は、「冗舌すぎ」「登場人物の印象が弱い」と指摘。また英紙ガーディアン(Guardian)の評論家、ピーター・ブラッドショー(Peter Bradshaw)氏の評価も5つ星中3つ星にとどまり、「河瀬作品は時に美しく感動的だが、若干作り込みすぎで自意識過剰に感じてしまうこともままある」と辛口のコメントを寄せている。(c)AFP/Deborah COLE