【5月13日 AFP】フランスで最も著名な黒人政治家であるクリスティアーヌ・トビラ(Christiane Taubira)法相が、奴隷制廃止を記念する行事でのフランス国歌斉唱を「カラオケ」のようだとして拒否したことで、辞任を要求する声に直面している。

 パリ(Paris)のリュクサンブール公園(Luxembourg Gardens)で行われた行事でフランス国歌「ラ・マルセイエーズ(La Marseillaise)」を歌わなかったトビラ法相に対し、中道右派野党・国民運動連合(UMP)からは批判の声が上がり、極右政党・国民戦線(Front NationalFN)は辞任を要求した。

 フェイスブック(Facebook)の自らのページに寄せられた批判に対し、トビラ法相が「ステージ上でのカラオケではなく、思索の時であるべき行事もある」と言い返すと、野党はいっそう反発した。

 UMPのジャンフランソワ・コペ(Jean-Francois Cope)党首は「カラオケを引き合いに出して、国歌を歌わなかったことを正当化するなど、もってのほかだ」と憤慨し、「彼女は大臣だ。(大臣として)言ってはならないこと、言う権利がないことがある。私だけではなく、何百万人ものフランス人が深くショックを受けているに違いない」と述べた。

 国民戦線のマリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)党首は「ラ・マルセイエーズをカラオケと比べた上で歌うことを拒否することで、リスティアーヌ・トビラは自分と現政権の本性をさらけ出した」「この受け入れがたい失言はフランスと、その歴史と国民、国歌を歌うことを愛し、国歌に誇りを抱く人々に対する彼らの最大級の侮辱を真に象徴する証拠だ」と非難した。

 フランスではこれまでにも、国歌を歌わなかった著名人が極右勢力から非難されたことがある。サッカーのスペイン1部リーグ、レアル・マドリード(Real Madrid)に所属するカリム・ベンゼマ(Karim Benzema)選手が「ラ・マルセイエーズを歌うことを私に強制することはできない」と述べた際には、国民戦線がフランス代表チームからの追放を求めた。ベンゼマ選手はフランス生まれで、アルジェリア系移民の両親を持つ。

 トビラ法相は、昨年の同性婚合法化を大きく推進した人物の1人であることなどから、同国の右派勢力から頻繁に攻撃対象とされている。同法相への敵対的な発言はしばしば、バナナを引き合いに出すなど、公然とした人種差別へと発展してきた。(c)AFP