【4月25日 AFP】アスピリンは、大腸がんの発症リスクを半減させる可能性があるが、この効果は特定の種類の遺伝子を高レベルで保有している人にしかみられないとの研究論文が、23日の米医学誌サイエンス・トランスレーショナル・メディシン(Science Translational Medicine)に掲載された。

 米ケース・ウエスタン・リザーブ大学医学部(Case Western Reserve School of Medicine)などの研究チームが発表した論文によると、アスピリンなどの非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)が結腸直腸がんの発症リスクを減少させることは以前から知られていたが、効き目がある人とない人がいる理由は解明されていなかったという。

 研究チームは、アスピリンの投薬期間中に大腸がんを発症した人から採取した細胞組織を調べて、特定の遺伝子を持つ人はアスピリンから予防効果が得られ、それ以外の人は得られないように思われる理由の解明を目指した。

 研究チームは、30年以上にわたって追跡調査した被験者12万7865人のうち、大腸がんを発症した患者270人の細胞組織を詳細に調べた。

 その結果、高レベルの「酵素15-PGDH」を生み出す遺伝子特性を持たない患者は、アスピリンから得られる大腸がんの予防効果がほぼゼロに等しいことを研究チームは発見した。

 論文の主執筆者で、ケース・ウエスタン・リザーブ大医学部のサンフォード・マーコウィッツ(Sanford Markowitz)氏は「今回の研究の被験者のうち、高い15-PGDHレベルを持ち、かつアスピリンを摂取した人を調べると、大腸がんの発症リスクが半減した」と語る。

 だが「研究の被験者のうち、15-PGDHレベルが低い人を調べると、アスピリン摂取による効果はまったくみられなかった。アスピリンから効果が得られると思われる人について、明確に分けられることを今回の研究結果は示している」と、マーコウィッツ氏は説明する。

 アスピリンは一部の患者で胃潰瘍や消化管出血を引き起こすため、アスピリンの大腸がんリスクを抑える潜在力から恩恵を受ける可能性がある人を特定することは、重要なステップになると研究チームは指摘している。

 研究チームは現在、アスピリンの効果が得られる見込みがある人とない人を簡単に特定できる検査の開発を目指している。(c)AFP