【4月9日 AFP】(一部更新、写真追加)交際相手を射殺したとして殺人罪などに問われている南アフリカの両足義足のランナー、オスカー・ピストリウス(Oscar Pistorius)被告(27)に対する裁判は9日、弁護側の被告尋問に続き、検察側の厳しい反対尋問が始まった。

 3日間に及んだ弁護側の被告尋問で、涙ながらに苦しい胸中を吐露してきたピストリウス被告はその最後に、昨年2月14日の夜、交際相手だったリーバ・スティンカンプ(Reeva Steenkamp)さんを侵入者と間違えて撃ってしまったとの主張を改めて訴えた。

 だがゲリー・ネル(Gerrie Nel)検事は反対尋問を開始するなり、憤然として「『間違った』のですか?」と大声で尋ねた。

「人を殺したのですよ。それがあなたのしたことです!あなたはスティンカンプさんを撃ち殺したのです。その責任を取らないのですか?」

「言いなさい。『人を殺しました』と言いなさい!」

 判事は審理中、ピストリウス被告を落ち着かせるため数回にわたって休廷を宣言した。

 反対尋問を再開したネル検事は、被告が射撃練習場でスイカを撃つ様子を写したビデオを再生した。

 ピンク色のスイカの果肉が空中に飛び散る様子を確認し、「脳よりやわらかかった」と言う被告の声を聞いた後、検事は証人席の方に向き合った。

 検事が「いいですか、これと同じことがスティンカンプさんの頭部に起きたのです」と言うと、すでに動揺していた被告は、さらに取り乱した。

 さらに検事は容赦なく、血まみれになったスティンカンプさんの頭部や、黒っぽく固まった血液がべったりと付着したブロンドの髪を写した生々しい写真を見せた。

「これがそうです」と言うと検事は被告の方を向き、「見てみなさい。見たくないのは分かっています。あなたは責任を取りたくないのですからね」と述べた。

 すると被告はこれまで以上に感情的に、はっきりと、「判事、私は責任を取っています」と述べた。

「写真を見る必要はありません。私はその場にいたのです」と言うと、被告は両手の平に頭を沈めた。

 同被告はスティンカンプさんはもちろん、自宅のバスルームのドアの後ろにいたと信じていた侵入者についても、殺す意図はなかったと主張している。だが、同被告がドアの後ろにいたのが誰なのか認識していたかどうかにかかわらず、命の危険がないのに人を殺す意図があったことを検察側が立証すれば、改めて殺人罪に問われる可能性もある。(c)AFP