【3月19日 AFP】ドイツの検察当局は18日、第2次世界大戦(World War II)中にユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)が行われたアウシュビッツ・ビルケナウ(Auschwitz-Birkenau)強制収容所にナチス(Nazi)の軍医として勤務していた男(93)の身柄を警察が拘束したと発表した。殺人ほう助など、複数の罪で起訴される見通しだ。

 年金を受給していたこの男は、ベルリン(Berlin)の北にあるノイブランデンブルク(Neubrandenburg)近くの自宅で拘束された。医師の診断を受けた後に出廷し、現在勾留されている。

 男はナチス親衛隊(SS)に所属する軍医として、1944年9月にドイツ、オーストリア、フランス、イタリア、オランダ、スロベニアからポーランド南部のオシフィエンチム(Oswiecim)までの8回の移送で連れてこられた収容者たちの大量殺人に関与したとされる。

 検察によると、このとき収容された人たちのうち、強制労働に不適格と判断された1721人が収容所内のガス室で殺された。

 今回の身柄拘束は、ナチスの戦争犯罪を追及するドイツの捜査当局からの情報提供と起訴勧告に基づくもの。ただし検察は、その情報提供がいつの時点で行われたものかは明らかにしていない。

 ドイツでは戦後60年以上、ナチスの戦争犯罪の被疑者は、個人的に残虐行為に関与したことを示す証拠がある場合にのみ起訴される状況が続いていた。

 しかし、2011年にミュンヘン(Munich)の裁判所がジョン・デミャニューク(John Demjanjuk)被告(当時)に対し、ポーランドのソビブル(Sobibor)にある強制収容所でユダヤ人絶滅を共謀したとして、禁錮5年の有罪判決を言い渡したことにより、強制収容所の元看守は全て起訴される可能性があることが示された。(c)AFP