【3月14日 AFP】7000万年前の北極では、小型のティラノサウルスが寒い気候をものともせずに、他の恐竜たちを捕食していたとする研究論文が12日、米オンライン科学誌プロスワン(PLOS ONE)に発表された。

 科学者たちは、米アラスカ(Alaska)州で発見された頭蓋骨の化石から新種と特定されたこのどう猛な恐竜を、「ホッキョクグマ・トカゲ」を意味する「ナヌクサウルス・ホグランディ(Nanuqsaurus hoglundi)」と名付けた。体高は現生人類ほどで、大きさは非常に近い種である「トカゲの王」ティラノサウルス・レックス(Tyrannosaurus rex、T・レックス)の半分ほどのサイズだという。

 複数の頭蓋骨の断片と歯についての分析結果をプロスワンに発表したのは米テキサス(Texas)州のペロー自然・科学博物館(Perot Museum of Nature and Science)のアンソニー・フィオリロ(Anthony Fiorillo)氏とロナルド・タイコスキー(Ronald Tykoski)氏。

 1年の半分が闇に包まれ、雨や雪が多い寒冷な大地を闊歩(かっぽ)していたこの小型ティラノサウルスは、夜間に狩りをするために強い嗅覚を備えていた可能性が高く、優れた視力も持っていた可能性がある。アラスカ州で発見されている肉食恐竜のトロオドン(Troodon)と同じくらいのサイズだったのではないか、とフィオリロ氏はAFPに語った。

■骨片が語る物語

 骨はアラスカ州北部のコルビル川(Colville River)の断崖で発見された。北極圏内にあるこの地域は7000万年前には今ほど寒くなく、現代の米ワシントン(Washington)州シアトル(Seattle)やカナダのカルガリー(Calgary)程度の気温だったとみられている。

 骨が発見された穴からは角の付いた草食恐竜の化石も発見された。草食恐竜の骨にあった歯形から、小型ティラノサウルスが草食恐竜を殺して食べようとしていたと考えられている。