【2月18日 AFP】ピエール・オーギュスト・ルノワール(Pierre-Auguste Renoir)の名作の本来の赤の色合いはどのようなものだったのだろうか?ビンセント・ファン・ゴッホ(Vincent Van Gogh)は黄色い花をどのように思い描いたのか?パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)は本当に家庭用ペンキを使ったのか?

 専門家らはこのほど、時間と共に色あせてきている、世界の最も偉大な名作絵画の本来の美しさに新たな光を当てることを、高度な科学技術が手助けをしていると述べた。

 サンプリング技術を最も微細なレベルにまで縮小することで、科学者らは現在、絵の具に含まれる個々の分子の振動がどのように異なるかを解明できるようになった。これにより、有機顔料の本来の発色を、1世紀以上前のそのままの色で見ることができるという。

 米ノースウエスタン大学(Northwestern University)のリチャード・ファン・デュイン(Richard Van Duyne)教授(化学)は、ルノアールが1883年に描いた絵画「Dans les roses (Madame Leon Clapisson)」を「表面増強ラマン散乱(SERS)」として知られる強力なX線顕微鏡技術を用いて分析した。

 ルノアールの原画とその復元画は、2月8日からシカゴ美術館(Art Institute of Chicago)で開かれている展覧会で同時に公開されている。ここでは、描かれた当時はこうだったと思われる姿を復元するために、科学者らがバラ色やさび色などの色合いをどのようによみがえらせているかを見ることができる。

 オランダ人科学者のヨリス・ディク(Joris Dik)氏は、ゴッホが1889年に描いた絵画「Flowers in a Blue Vase」で、カドミウムイエローがどのようにして灰色がかった色に変色したかを解明した。

 同氏は、米シカゴ(Chicago)で開催された米国科学振興協会(American Association for the Advancement of ScienceAAAS)の年次総会で、記者団に対し「われわれは、オリジナルの絵画を複製することに非常に興味を持っている」と語った。

 ゴッホが描いた花のデジタル復元では、黄色い花々の色がより深く鮮明になっている。

 オランダ・デルフト工科大学(Delft University of Technology)にあるディク氏の研究室では現在、芸術家による創造を実際の作品に手を加えずに示すために、表面の質感と元の色調を3次元画像の中で再現する研究に取り組んでいる。

 ディク氏は「このようなデジタル復元が可能になれば、(保存のための標準的な方法が持つ)倫理的または技術的な限界に縛られることがなくなる」と述べた。