【11月15日 AFP】ブラックホールから超高速でジェット状に噴きだされる物質に鉄などの重い原子が含まれている可能性があるとの研究論文が13日、英科学誌ネイチャー(Nature)で発表された。

 天文学者らは数十年にわたり、宇宙で最も強力な現象である、ブラックホールから噴出される物質の細いビームに興味を引かれてきた。

 このジェットには、負(マイナス)に帯電した粒子である電子が含まれていることは分かっている。だが謎なのは、ジェット全体が負に帯電していないことだった。これは、負の電荷を相殺する、正(プラス)に帯電した「何か」がそこにあるはずということを意味するからだ。

 そこでオーストラリア連邦科学産業研究機構(Commonwealth Scientific and Industrial Research OrganisationCSIRO)の研究チームは、欧州宇宙機関(European Space AgencyESA)のX線観測衛星XMMニュートン(XMM-Newton)と豪州東部のコンパクト電波干渉計(Compact Array)を使用して、この「何か」が鉄やニッケルなどの原子とみられることを突き止めた。

4U1630-47」と呼ばれる小型のブラックホールから、光速の3分の2の速度で放出されているジェットの中で、複数の原子スペクトルが観測された。このジェットの発生源は、降着円盤とみられている。降着円盤は、ブラックホールの吸い込み口を取り巻く高温ガスの帯だ。

 今回の発見の重要性は、ブラックホールが破壊だけでなく、創造もすることを示した点にある。

 ブラックホールは、物質やエネルギーを宇宙空間に再循環させる。ジェットは、銀河の星形成がいつどこで起きるかを決めるのに一役買っている。

 CSIROのTasso Tzioumis氏は、プレスリリースの中で「超大質量ブラックホールから放出されるジェットは、銀河の運命を決めるのを助ける」と述べている。「そのため、ジェットが周囲の環境に及ぼす影響に関する理解をさらに深めたいと考えている」

 鉄の原子は電子の約10万倍の質量を持つため、同じ速度で進む軽い粒子に比べて、はるかに多量のエネルギーを運ぶことになる。

 星間空間での物質との衝突によって、ガンマ線と電子が発生しているかもしれないと研究チームは述べている。(c)AFP