【11月14日 AFP】(一部更新)果実のプラムほどの大きさのピンクダイヤモンド、「ピンク・スター(Pink Star)」が13日、スイス・ジュネーブ(Geneva)で競売大手サザビーズ(Sotheby's)の競売にかけられ、1つの宝石としては史上最高額の7632万スイスフラン(約83億円)で落札された。

 59.60カラットのピンク・スターは、ジュネーブ湖(Lake Geneva)のほとりにある高級ホテル、ボー・リバージュ・ホテル(Beau Rivage Hotel)で行われた高級ジュエリー・オークションの目玉だった。この日のオークションに掛けられる最後から2番目の品として、競売人の隣に立ったモデルが指輪に付けたこのダイヤを見せると、会場にはどよめきが上がった。

 オークションはスイスフラン建てで行われ、価格は4800万フラン(約52億円)から100万フラン(約1億1000万円)単位で上げられていった。入札価格が6700万フラン(約73億円)を超えると長い沈黙が続き、その後、電話参加ではなく、会場にいた人が6800万フラン(約74億円)で落札した。

 サザビーズによると、落札したのはニューヨーク(New York)のダイヤモンド研磨工、アイザック・ウォルフ(Isaac Wolf)さん。落札したダイヤの名称を「ザ・ピンク・ドリーム(The Pink Dream)」に変える考えだという。サザビーズが受け取る手数料を含め、落札者が支払う金額は最終的に7632万フランになる。予想落札価格は、6000万ドル(約59億5300万円)だった。

 落札者が決定すると、会場にいた約150人からは拍手が湧き起こり、映画『ピンクパンサー(Pink Panther)』のテーマ曲が流される演出と共に、スタッフからピンクシャンパンのグラスが配られた。

■「真に高貴な宝石」

 光輝くオーバルカットの「ピンク・スター」 は、縦2.69センチ、横2.06センチで、重さは11.92グラム。色とクラリティ(内包物の少なさ)はともに最高評価クラスで、サザビーズの欧州・中東地域宝石部門のデービッド・ベネット(David Bennett)会長は「真にすばらしく、高貴な宝石であると、ためらいなく言える。このサイズと色の宝石は他に存在が知られていない」と話している。

 サザビーズによると、1999年にアフリカでダイヤ最大手デビアス(De Beers)によって採掘された際の原石の状態では132.5カラットだった。産出国は明らかにされていない。

 発見後、シュタインメッツ・ダイヤモンズ(Steinmetz Diamonds)が2年をかけてカットと研磨を施し、「シュタインメッツ・ピンク(Steinmetz Pink)」として2003年に公開。その4年後には売却され、名称が変更されたが、当時の価格、購入者ともに公表されていない。

 サザビーズは13日のオークションでも出品者を明らかにしておらず、2007年以降に売買されていたか否かについても公表していない。

■景気低迷で高まる宝石人気

 ダイヤモンドのほか、この日のオークションでは114.74カラットのサファイヤが予想落札最高価格の2倍に近い760万フラン(約8億2600万円)で落札された。

 アナリストらは、経済情勢の先行きが不透明な時期には、投資家らが宝石に目を向ける傾向がある点を指摘している。増加する世界の富裕層にとっても、宝石の所有はステータスになる。

 また、サザビーズのベネット氏は、「ここ30年で、市場は完全に国際化した」と話している。(c)AFP/Jonathan FOWLER