【10月28日 AFP】サウジアラビアのメディアや警察によると、同国で26日、女性が自動車を運転することを禁ずる規則に違反したとして、少なくとも16人の女性が罰金を科された。この日は、女性の運転解禁を求める活動家たちが、一斉運転行動を呼び掛けていた。

 呼び掛けに応じて実際にハンドルを握った女性は、ごく少数にとどまった。首都リヤド(Riyadh)の警察関係者によると、同市では6人の女性にそれぞれ300リアル(約8000円)の罰金が科されたという。

 マイクロブログのツイッター(Twitter)に作られた抗議運動のアカウント「@oct26driving」には、10人余りの女性が、自分が車を運転する様子を捉えた動画を投稿した。

 動画共有サイト「ユーチューブ(YouTube)」には少なくとも4本の動画が投稿された。そのうちの1本はリヤドで撮影されたもので、他の3本は東部州(Eastern Province)」で「決意」を示す女性たちが撮影したものだと、活動家のナジーマ・アッサダ(Naseema Assada)さんは述べている。

■運動に当局の締め付け

 運動を呼び掛けた活動家らは当初、女性の運転禁止に抗議するため26日に一斉に運転しようと、ソーシャルメディアを通じて国内の女性たちに働きかけていた。アッサダさんは、「内務省の脅しがなければ、もっと大勢の女性が参加していただろう」と話した。

 アッサダさん本人は26日、「当局への挑戦」と受け取られないよう運転はしなかった。だが、この日に果敢にも規制に抗議して車を運転した女性たちに当局からの「おとがめ」がなければ、数日内にも、ハンドルを握る女性は増えると、活動団体は見込んでいる。

 AFPカメラマンの報告によると、この日リヤドでは警察官が市内を巡回し、市内数か所の検問所にも警官が配備された。

 また内務省も23日、「女性が運転する日」などの名目での集会やデモ行進で「治安を乱そうとした」者に対しては、何らかの行動に出ると示唆していた。

「運転は女性の選択肢の1つ」と銘打ったキャンペーンは、政府の警告を受けて今回のところは勢いをそがれた格好だ。中には内務省から、26日には運転しないよう求める電話を受けた女性たちもいるという。

 女性活動家の1人、マイサ・アムディ(Maysaa al-Amudi)さんは、「特定の日に集会が行われることを、政府は歓迎しない。当面は状況を落ち着かせたい。今後もキャンペーンは続けるが、特別に日にちは設定しない」と話した。

■女性の運転に根強い反対も

 女性の運転禁止に抗議する日として活動家らが特に26日を選んだのは、10年以上も前のこの日が、女性にも運転権を求める運動が初めて行われた「象徴的」な日だからだ。

 ネット上で運転する女性たちの姿を撮影した動画の投稿が増えるなど、2週間ほど前からハンドルを握る女性たちは各地で増加している。

 その一方で25日、女性の運転解禁を求める活動家たちが9月に開設したオンライン嘆願書「Oct 26th, driving for women(10月26日は女性が運転する日)」がハッカーの攻撃を受けた。約1万6000件の署名を集めた嘆願サイトだったが、「サウジ王国で女性が運転することに反対する」など反対意見も書き込まれていた。結局、サイトは当局によって閉鎖されてしまった。

 こうした状況に国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)は、女性の運転運動に対する脅しを強く非難。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(Human Rights WatchHRW)も、女性への差別をやめるよう訴えた。

 過去に運転禁止に立ち向かった女性たちは、サウジ当局ともめる結果になっている。1990年には、女性の運転禁止に対する抗議行動として女性47人が運転を試みたが、当局に阻止された。2011年にも、運転禁止に抗議して車を運転した女性たちが警察に逮捕され、二度と運転しないとの誓約書に署名させられている。

 アッサダさんは、「女性たちは今後も(抗議行動として)運転を続ける。この問題に関して、女性に運転免許証を発行すると政府が正式に決定を下すまでは」と語っている。(c)AFP