【10月24日 AFP】アイルランドで今週、少数民族ロマの家庭に金髪の子どもがいるとの市民からの通報を受けて、女児(7)と男児(2)がそれぞれ別のロマ人家庭から警察に保護された。ところが当局は23日、いずれもロマ人の両親との血縁関係が確認されたとして、2人を家族の元に帰したと発表した。

 2人が家族から引き離されたのがギリシャのロマ人居住地で血縁関係のない夫婦と暮らしていた金髪の女児が保護された直後だったことから、人種による選別だと批判する声が上がっている。

 警察によると、2人は家族との血縁が証明されたため家に帰された。警察側は「児童福祉問題に関する市民からの通報は全て、極めて真剣に受け止める」と説明した上で、「この繊細で難しい領域」をめぐる方針は常に見直しを行っているとも述べた。

 メディア報道によると、2人にはDNA鑑定が行われたという。

■「魔女狩り」に懸念

 欧州ではギリシャの事件を受けて、各国に存在するロマ人コミュニティーに注目が集まっている。アイルランドのアラン・シャッター(Alan Shatter)司法・平等・国防相は国民に対し、ロマ人を偏見を持って見ないよう警告した。

 警察がAFPに明かしたところによると、2歳の男児は22日に中部アスローン(Athlone)の家族の元から引き離され、児童福祉法に基づいて「保護」された後、翌朝、家に戻されたという。

 男児の父親はアイルランド公共放送RTEテレビに対し、男児は金髪に青い目をしているが、母親も曽祖父も同じ髪と目の色をしていたと片言の英語で訴えた。「わたしの妻も祖父も同じだと言ったが、警察は『分かっているが、それだけでは人々は信じない』と答えた。そこで血液検査をしてみろと言ったんだ」。警察と何時間も押し問答を続けた末、DNA鑑定の結果が出るまで息子を1晩、当局の保護下に置くことに同意したという。

 一方、7歳の女児はダブリン(Dublin)のロマ人家庭から引き離された。メディア報道によると、女児は両親と外見が似ておらず、両親は娘の出生証明書とパスポートを提示したが警察は納得しなかったという。家族側は代理人を通じて声明を発表し、娘を一時取り上げられたことに対する怒りを表明している。(c)AFP/Conor Barrins