【10月10日 AFP】米航空宇宙局(NASA)が、来月開催する会議に中国人科学者の出席を禁止する決定を下した。この措置に対して、この参加制限の根拠となった法律の条文を作成した米議員は8日、「誤っている」として批判した。

 米カリフォルニア(California)州にあるエイムズ研究センター(Ames Research Center)で11月4~8日に開かれる、太陽系外惑星についての第2回ケプラー科学会議(Kepler Science Conference)に中国国籍の人物の参加を許可しないとNASAが発表したことで、米国の高名な天文学者の間で会議ボイコットの動きも出ている。

 カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)の天文学者ジェフ・マーシー(Geoff Marcy)教授は、会議主催者宛てのメールで「こうした方法で差別を行う会議には、良心に照らして、出席することができない。この会議は何兆マイルもかなたに位置する惑星に関するものであり、国家安全保障への影響など何もない」と抗議した。

 今回の参加制限は、2011年に米議会を通過し、バラク・オバマ(Barack Obama)大統領が署名して成立した法律に基づいている。この法律はNASAの資金を中国との協力に使用することや、またNASA関連施設に中国人を招くことを禁じている。

■NASA上層部の勇み足?

 法案にこの条文を盛り込んだのは、下院商務・法務・科学ならびに関連機関に関する小委員会(House Subcommittee on Commerce, Justice, Science and Related Agencies)のフランク・ウルフ(Frank Wolf)委員長だった。

 しかしウルフ議員の事務所は8日、NASAのチャールズ・ボールデン(Charles Bolden)長官に書簡を送り、この件について最初に報じた4日付の英紙ガーディアン(Guardian)などの報道の訂正とNASAの措置の変更を求めた。

 その書簡の中でウルフ氏は「遺憾ながら、報道には多くの不正確な部分があり、NASAのエイムズ研究センターから出席者への案内も同様であるように見受けられる。(問題の法律は)主として中国共産党政権あるいは中国国営企業とNASAの2者間の会議や活動を制限しているもので、多数が出席する会議などは対象としていない。また、中国政府を公式に代表する人物でないかぎり、中国国籍を持つ個人が関わる活動に制限を設けていない」と指摘した。

 今年米バージニア(Virginia)州にあるNASAの施設で中国人の機密保護違反が疑われたことから、中国、ミャンマー、エリトリア、イラン、北朝鮮、サウジアラビア、スーダン、ウズベキスタンの国籍の人物には新規入構許可発行が一時的に停止されたことがあった。ウルフ氏は、このためNASA上層部がケプラー科学会議にも同様の措置が必要だと思ったのだろうと述べている。

■政府閉鎖のあおりで解決長引く

 連邦予算不成立で1日から始まった一部の米政府機関閉鎖のあおりを受け、NASA職員の97%が一時帰休を強いられている。AFPはこの件でNASAに取材を試みたが広報担当者に連絡をとることができなかった。ケプラー科学会議の主催者の1人である米カーネギー研究所(Carnegie Institution for Science)のアラン・ボス(Alan Boss)氏は、政府機関閉鎖でNASA職員は仕事関連の電子メールを読むこともできなくなっているからだろうと指摘し、政府閉鎖がなければケプラー科学会議の問題はとっくに解決されていたと思うと述べた。

 ボス氏らケプラー科学会議主催委員会は8日、中国をはじめとする外国の参加者を会議から排除することに強く抗議するという声明を発表した。(c)AFP/Kerry SHERIDAN