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東京五輪の影に浮かび上がる立ち退き問題

2013年09月17日 17:11 発信地:東京

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東京五輪の影に浮かび上がる立ち退き問題 ▲ キャプション表示
×2020年に東京で開催される夏季五輪・パラリンピックに向け建て替え予定の国立競技場の完成予想図(2013年9月9日提供)。(c)AFP/TOKYO 2020 OLYMPIC AND PARALYMPIC BID COMMITTEE
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【9月17日 AFP】2020年夏季五輪の開催地に決定した東京。1964年大会に使用した施設を再開発する計画が進められているが、地元住民にとってそれは2度目の立ち退きを意味する。

 7日に行われた国際オリンピック委員会(International Olympic CommitteeIOC)総会で東京が開催地に選出された際、日本に住むほとんどの人はそのニュースを喜んだ。しかし一方で東京都在住の甚野公平(Kohei Jinno)さんは、自分の運命を恨んだという。

 甚野さんはかつて1964年大会のメーン会場建設のために、自宅と商売場所を失ったことがある。そして今回もまた、2020年大会に向けて施設の拡大と再開発が行われるため、再び立ち退きを余儀なくされている。

 AFPの取材に対し、甚野さんは「五輪を見たくもない。心の底深く五輪に対する怨念のような気持ちがあるんです」と話した。

 1964年東京五輪は、日本が第2次世界大戦の焼け野原から復興を遂げ、現代的な経済国家として生まれ変わったことを象徴する出来事だった。東京のあらゆる所に近未来的な五輪施設が建てられ、新幹線が開通し、都市高速や空港のモノレールもできた。

 そして今回もまた、多くのインフラ設備投資が始まる。1964年大会の準備と比べると規模は小さいが、それでも東京都は五輪関連の施設を建設するために約4000億円を投じることを発表しており、国内の建設業界は多大な恩恵を受けることとなる。

 会場となる35の施設のうち20が新築される予定で、そのうちのほとんどが現在急速に開発が進んでいる海岸沿いに建てられることとなる。また、道路の新設や改良工事などにもおよそ55億ドル(約5500億円)が投じられる。

 一方、現在の国立競技場(National Stadium)は取り壊され、その跡地に13億ドル(約1300億円)かけて開閉式屋根を備えた8万人収容のメーンスタジアムの建設が計画されている。

■立ち退きを強いられている地元住民

 ところがこの新しい国立競技場は、甚野さんが営むたばこ販売店と自宅がある都営霞ヶ丘(Kasumigaoka)アパートに被さる形で建てられる予定となっている。

 都営団地である霞ヶ丘アパートは、1963年に現在の国立競技場から少し離れた場所に設営された。甚野さんは1964年に元々住んでいた場所を追いやられた後、1966年にこの霞ヶ丘アパートに引っ越してきた。

 全体で200世帯ほどが住んでおり、そのうちの3分の1が70歳以上の老人。それでも再開発のために住民は、都から他3か所の都営住宅への引っ越しを強要されている。

 老人にとって、新しい土地で新しい関係を築くことは難しいと甚野さんは語る。

「おそらくたばこ屋ができない所に行くんでしょう。そうすれば生き甲斐が無くなってしまう」

 また、甚野さんは公費について、五輪開催よりも、2011年東日本大震災の影響を受けた東北地方の被災者のために使ったほうが有効だと考えている。

「年に何回しか使わない競技場を維持するために、何十年もの間、いっぱい税金を注ぎ込んできたが、また大金をかけて作るんだということは、すごく腹立たしく思っています」

 東京都は、五輪開催が被災地の復興や、被災者の精神面にとっても後押しになると主張してきた。

 1万8000人が犠牲となった大震災から2年半経った今、原発の事故などの影響もあり、未だ29万人もの人が避難生活を強いられている。

 震災で海辺の自宅を追いやられ、福島第一原発から60キロメートルに位置する福島市で避難生活を送っている86歳の森国行(Mori Kuniyuki)さんは、河北新報(Kahoku Shimpo)からの取材に対し、「7年後の五輪より今の生活を何とかしてほしい」と語った。(c)AFP/ Shigemi SATO

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