【4月26日 AFP】ベールで顔を隠しもせず、自分の倍も体が大きいクルド人男性たちに怒鳴り声で指図する女性司令官エンギゼク(Engizek)氏(28)の姿は、男性が圧倒的多数を占めるシリアの反体制派戦闘員たちに衝撃をもたらす光景だ。

 銃で武装した親衛隊を引き連れた小柄のエンギゼク氏は、シリアのアレッポ(Aleppo)市内の戦闘区域シェイクマクスド(Sheikh Maqsud)で数十人のクルド人部隊を率いている。シェイクマクスドの大半の地区は、先月末の戦闘でシリア政府軍から反体制派が奪還したばかりだ。

   「女性にもマシンガンやカラシニコフ銃は撃てるし、戦車だって操れる。男性と同じくらい上手に」と、エンギゼク司令官は語る。ズボンにベージュのダウンベスト、ダークブラウン色の髪は後ろできつく束ねている。

 倒壊した、銃弾で壁が穴だらけの建物に挟まれた人気がない路地で、狙撃兵たちが放つ銃声が散発的に響き渡る中、エンギゼク氏はAFPの取材に語った。「女性はわれわれ反乱軍で欠くことはできない」

 エンギゼク氏のような女性戦闘員は、3年目に突入したシリアのバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)政権に対する反乱軍の、表に現れない側面の1つだ。エンギゼク氏が属するクルド人民防衛隊(YPG)は20%が女性で構成されている。

 最近、シリア反体制派に合流したYGPは、トルコの非合法武装組織「クルド労働者党(PKK)」のシリアにおける姉妹組織、民主統一党(PYD)の武装部門とされている。

 4人家族の中で、シリア軍と反体制派の戦闘に加わっているのはエンギゼク氏だけだ。地元でYPGの訓練キャンプに参加し、一夜にして高校に通う少女から戦闘員になったのだという。エンギゼク氏の出身はアレッポの北にあるアフリン(Afrin)で、住民の大半はクルド系だ。

 アラブの女性たちとは異なり、クルドの女性には戦闘に参加する長い伝統がある。PKKの荒々しい女性戦闘員たちは、自爆攻撃さえ実行する恐るべき戦意で1990年代半ばに世界の注目を集めた。

 だが、民族が何であれ、女性戦闘員は、男性が圧倒的多数を占めるシリア反体制派をぎょっとさせる異端な存在だ。

 シリアの人々の中には女性の戦闘参加に反対する人もいるが、エンギゼク氏は「女性の権利を認めない者と協力するつもりはない。組織としても認められないし、1人の女性としても認めることはできない」と語った。(c)AFP/Anuj Chopra