【4月8日 AFP】大型トラックが煙突群のそばを通り過ぎる光景からは、シカゴ(Chicago)のこの通りが米国で最もグリーンな道路だとは、絶対に分からないだろう。

 だが、トラックのタイヤが転がるのは、「スモッグを食べる」舗石。街灯は太陽光と風力で運用され、歩道のコンクリートはリサイクル。そして低木の生い茂る「バイオスウェール」は下水道に雨水を流し込まない。

「持続可能性がわれわれにとって重大だ」と、シカゴ市の持続可能性担当主任、カレン・ウェイガート(Karen Weigert)氏はAFPの取材に語った。

「それはクオリティ・オブ・ライフ(生活の質)の一部であり、どういった職種の仕事を引き込むことができるかという意味で経済的な機会であり、納められた税金に対するわれわれの責務だと考えている」

■複合的なグリーン都市開発

 シカゴでは、気候変動の影響(今よりも激しい暴風雨、今よりも極端な気温など)を緩和する対策の一環として、よりグリーンな都市計画の実験を行ってきた。

 シカゴの工業地区の道路2マイル(約3.2キロメートル)分の再整備プロジェクトには1400万ドル(約14億円)の予算が投じられた。プロジェクトにはエネルギー削減、汚染対策、廃棄物削減、水利用管理、コミュニティー形成など、都市開発者が思いつくであろうほぼ全てのアイデアが盛り込まれている。

 驚くべきことに、プロジェクトの費用は従来の道路再舗装と比べて21%低く、維持費も割安になる見込みだ。

「これらは全て、都市の対策として不可欠なものだ」と、米環境保護団体「天然資源保護協議会(Natural Resources Defense CouncilNRDC)」の水アナリスト、カレン・ホッブス(Karen Hobbs)氏は語る。

 大雨で屋根や道路、駐車場から洗い流された汚染物質はたいていの場合、飲料水を提供する河川や湖に流れ込む。雨水排水路があふれると、下水もあふれ出すことになる。

 樹木や低木、芝生を植えることは、下水に雨水が流れ込むことを防止するだけでなく、二酸化炭素を吸収し、日光に熱せられたアスファルトによる「ヒートアイランド」現象を緩和させ、地区の全般的な快適度を向上させる。

 また、公共交通機関を改善し、自転車レーンを作ることは、渋滞を緩和し、排ガス汚染を削減し、生活の質向上にもつながる。

 さらに、街灯に高効率の電球を使ったり、ミニソーラー発電所やミニ風力発電所を設置してエネルギーを削減することは、排ガスの削減になるだけでなく、経費の節減にもなる。

 連邦政府による気候変動対策を待たずに、地元独自の「後悔しない」ための対策に取り組む都市は、シカゴを含め、増加傾向にある。

「言い換えると、これは地元の住民と企業の資金節約になり、生活の質を向上し、それに加えて排ガスを削減する対策だ」と、ホッブス氏は語った。

 一方、シカゴ市は、「スモッグを食べる」舗石の導入については、全米で初めての試みだと述べる。

■ローマ法王庁の要望から生まれた「スモッグ食べる舗石」

 バチカン(ローマ法王庁)がキリスト生誕2000年を記念して、ローマ(Rome)の大気汚染にさらされても白いままでいられる教会を建設したいと考えたことから、この魔法のような物質は誕生した。

 イタリアのセメント大手Italcementiは、二酸化チタンを使って日光と化学反応を起こし、分解速度を加速させて教会をきれいに保つ製品を開発した。

 だがItalcementiは、この物質が教会の汚れをきれいにしているだけでなく、屋根の上空2.5メートルまでの大気をも清浄化していることを発見した。

 価格が従来の舗装と比べて大幅に割高なため、シカゴ市では、厚みを減らし、自転車レーンと駐車レーンのための透水性舗石として利用している。

■「未来を設計」

 プロジェクトマネージャーのジャネット・アッタリアン(Janet Attarian)氏は、「スモッグを食べる」舗石が印象強いものの、実質的な違いを生み出すのは複合的なアプローチだと語る。

「私たちは道路を当然のものと思い込んでいる。『ただの道路なのに、それについて何ができるというの』と。だが、実際にはかなりのことができるのだ」

 暴風雨の際に下水に流れ込む水量を最大80%削減することにより、老朽化する下水路の整備に多額の予算を投入することを防ぐ、あるいは遅らせることができる見込みだ。

 また、プロジェクトの建設資材の23%をリサイクル品でまかない、建設廃棄物の60%をリサイクルすることで、市の埋め立て地への圧迫が低減されるとともに、地元企業に新たなコスト削減の方策を提供した。

 さらに、「バイオスウェール」に植える植物に干ばつに強い品種を選ぶことで、今後気候変動の影響により訪れると予想されるより暑い夏でも、上水を浪費せずに済む。

 シカゴ市は現在、今後の道路建設の要件として、これらのグリーン対策の多くを取り入れた新ガイドラインの策定を進めている。

「これらのインフラ計画は50年、100年と続くものだからこそ、最終的に方針を決めたらやり直すことができない。現在のことだけでなく、未来のことも設計しなければならないのだ」とアッタリアン氏は語った。(c)AFP/Mira Oberman