【9月20日 AFP】(写真追加、一部更新)初期のキリスト教徒の一部の間ではイエス・キリスト(Jesus Christ)は結婚していたと信じられていたと、米ハーバード大学(Harvard University)の教授が学会で発表した。「私の妻」というキリストの言葉が4世紀のパピルスの紙片にコプト語で書かれているのを発見したという。18日の大学公式紙ハーバード・ガゼット(Harvard Gazette)が伝えた。

 コプト語はエジプトのキリスト教徒が使っていた言葉。見つかったパピルス片の大きさは縦3.8センチ横7.6センチで、そこに書かれた4つの単語を翻訳すると「イエスは彼らに言った。『私の妻は…』」という意味になるという。

 イタリア・ローマ(Rome)で開かれた第10回国際コプト学会議(International Congress of Coptic Studies)でこの発見を発表したハーバード大学神学大学院(Harvard Divinity School)のカレン・キング(Karen King)教授によれば、キリストは未婚だったという考え方が信者の間では一般的だが、それを証明する信頼性の高い歴史資料は存在しないという。

 キング教授は、今回の発見について「イエスが結婚していたと証明するものではない。だが、イエスが結婚していたかどうかという疑問自体が、セクシュアリティーと結婚をめぐる激しい論争の中から初めて生まれたものだったことを示している」と述べた。キング教授によると、キリスト教徒たちはかなり初期から結婚の是非について議論を交わしてきたが、イエスが独身だったかどうかにその論拠を求めるようになったのはイエスの死後100年以上経ってからだという。

 今回発表されたパピルス紙片については既に複数の専門家が偽造されたものではないと確認しているが、キング教授は「インクの化学成分などをさらに詳しく分析して最終的に判断したい」と話している。

■バチカンや神学者は疑問視

 一方、ローマ法王庁(バチカン)のフェデリコ・ロンバルディ(Federico Lombardi)広報局長はAFPの取材に対し、キング教授の歴史学者としての能力を疑うわけではないとしつつ、「問題の文書の出所はわれわれには見当も付かない。長きにわたる伝統に基いた(キリストが未婚だという)教会の立場は変わらない」と述べた。

 また、パリ大学プロテスタント神学部(Protestant Faculty of Theology in Paris)のジャックノエル・ペレ(Jacques-Noel Peres)教授は、問題の紙片は比較的後世に書かれたもので「それ以前の文書に、キリストが既婚だったとの記述は見たこともない」と指摘。さらに、問題の文書が書かれた時代には「妻という言葉は、必ずしも配偶者を指していたわけではない」と述べた。(c)AFP