【1月11日 AFP】カリブ海の水深5000メートルの海底で発見された世界最深の火山性熱水噴出孔は、目のないエビや真っ白な触手を持つイソギンチャクなど、新種の生物の宝庫だったとする論文が、10日の英学術誌Nature Communication電子版に掲載された。

 450度以上のミネラル豊富な熱水を噴き出す噴出孔は、ケイマン諸島(Cayman Islands)南方のケイマン海溝で発見され、深海に初めて潜った科学者の名前にちなんで「ビーブ噴出孔フィールド(Beebe Vent Field)」と名付けられた。この海溝は世界最深のブラックスモーカー(混濁した液体を噴出する孔)があることで知られている。

 英国立海洋学センター(National Oceanography Centre)のドウ・コネリー(Doug Connelly)氏と英サウサンプトン大(University of Southampton)のジョン・コプリー(Jon Copley)氏率いる研究チームは、2010年、ロボット潜水艇を使ってケイマン海溝を探査。カメラは新種のエビ「Rimicaris hybisae」の姿をとらえた。1平方メートルあたり2000匹程度が塊を作っていた。

 このエビには目がない代わりに、背中には光受容体があった。噴出孔のかすかな光をここで感知して移動していると考えられる。

 ここから4000キロ離れた大西洋中央海嶺の噴出孔の周囲では、近縁種のエビ「Rimicaris exoculata」が発見されている。

   「これらの噴出孔の生物種を研究し、他海域の噴出孔に生息する種と比較することで、深海の生物がどのように拡散し、進化していったかが分かるかもしれない」とコプリー氏は言う。ただし、深海の生物が著しく距離の離れた別の噴出孔フィールドへどのように移動できたのかは大きな謎だという。

 なお、ビーブ噴出孔フィールドの別の場所では、銅に富んだ暖かい水がしみ出している孔の周囲に真っ白な触手を持つイソギンチャクの群生があった。ケイマン海溝のデント山の噴出孔周辺でも、新種のエビやヘビのような魚、新種のカタツムリ、ノミに似た新種の甲殻類が見つかったという。(c)AFP