【3月8日 AFP】世界の大手自動車メーカーたちが巨額の開発費を投じ、環境に優しい電気自動車の開発に乗り出しているなか、富山市のタケオカ自動車工芸(Takeoka Jidosha Kogei)は手作りで小型グリーンカーの開発に挑戦している。

 雪が残る丘陵地帯のガレージ工房では、10人ほどのメカニックが1人乗り電気自動車ミリュー(Milieu)の最後の仕上げをしていた。産業用ロボットや組み立てラインは見当たらない。2ドアのT-10は、大人のドライバー1人と小型のペットが乗れる大きさ。ペットと乗りたいという声に応えて設計したものだ。緑、白、赤、イエローがあり、価格は85万6000円と値ごろだ。

 他の電気自動車と同じく、リチウムイオンバッテリーを搭載し、家庭のコンセントで充電できる。最新モデルはフル充電時、時速60キロで最長70キロの走行が可能だ。大半のユーザーが買い物など自宅から数百メートル以内の移動に使うため、自宅で充電しておけばそれ以外の場所で充電する必要はないという。

 同社のラインナップには、軽いFRP(繊維強化プラスチック)製で1~4人乗りの6モデルがある。全長は最も大きいモデルでも3メートル以下で、重量は300~740キロだ。

■「ミニカーのイメージを変えたい」

 同社の武岡学(Manabu Takeoka)専務は、高齢者で普通の車を運転できなくなったり、酒気帯び運転で免停になった人のための車といった、これまでのミニカーのイメージを変えたいと語る。ミリューのデザインは日本のマンガの伝統に多くを負っているように思える。最新モデルは若い人に受けるようキュートなデザインにしたのだという。

 駐車料金の高さから公共交通機関を利用する人が多い都市部ではなく、2台以上の車を保有する世帯が多い地方のマーケットを念頭に置いている。

 タケオカ自動車工芸は1981年、障害者向けのミニカーの製造から出発した。90年代に北陸電力(Hokuriku Electric Power)の協力を受け、電気自動車の開発を始め、車体デザインには富山大学(Toyama University)が協力している。同社は鉄道トンネル点検用の小型電気自動車も製造している。

 同社の電気自動車は斬新で人目を引くが、販売台数はまだ年間100台ほどで、近いうちに市場を席巻する兆しはない。生産台数を増やす計画はないかという質問に武岡氏は「うちはそんなにたくさん作れませんよ!」と語った。(c)AFP/Karyn Poupee

【参考】タケオカ自動車工芸