【10月20日 AFP】1998年にノーベル文学賞を受賞したポルトガルのジョゼ・サラマーゴ(Jose Saramago)氏(86)が18日、聖書を「悪いモラルの手引書」と非難するとともに「聖書がなかったら世界はもっと良くなるだろう」と発言し、物議を醸している。

 19日の地元LUSA通信の報道によると、サラマーゴ氏は、ポルトガル北部のペナフィエル(Penafiel)で行われた新著『Cain(カイン)』の出版会見で、次のように息巻いたという。「聖書は悪いモラルの手引書で、われわれの文化、そして生活様式にも強い影響を与えている。聖書がなかったらわれわれは今とは異なり、恐らくもっと良い人間になっていただろう」

 なお『Cain』は、旧約聖書に出てくる、アダムとイブの息子で弟アベルを殺害した「カイン」の物語を風刺的に書き換えたもの。サラマーゴ氏は、神を「われわれの頭の中にだけ存在する残酷で嫉妬深くて鼻持ちならないもの」と表現するとともに、「旧約聖書を読まないカトリック教徒にとっては(この本が)問題だとは思わない。ユダヤ教徒は気分を害すかもしれないが、わたしにとってはどうでもいいこと」と話した。

 これについて、同国ローマカトリック教会の指導者らは、「(新著を)宣伝せんがための発言だ」と激しく非難。また、リスボン(Lisbon)のユダヤ人コミュニティーを代表するあるラビは、「サラマーゴ氏は聖書を表面的にしか理解していない」とのコメントを出した。

 サラマーゴ氏は92年にも、「イエス(Jesus Christ)がマグダラのマリア(Mary Magdalene)と性交して童貞を失い、世界を支配するために神に利用される」という内容の著書『The Gospel According to Jesus Christ』が国内でスキャンダルを起こし、これがきっかけでスペイン・カナリヤ諸島(Canary Islands)のランサローテ島(Lanzarote)に移住した。(c)AFP