【7月8日 AFP】エジプトのアンワル・サダト(Anwar Sadat)元大統領の家族が、1981年に起きた同大統領暗殺事件を「殉教者による裏切り者の抹殺」として描いたドキュメンタリー映画のイラン人制作者らを名誉棄損で訴える構えを見せている。

 エジプトの独立系アルマスリ・アルヨウム(Al-Masry al-Youm)紙は6日、「Assassination of a Pharaoh(ファラオの暗殺)」と題されたこのドキュメンタリーがイランのテレビで放映されたと報じた。同紙によると、映画は「イスラム教ルネッサンスの殉教者たち」に敬意を表して放映されたもので、「殉教者ハリド・イスランブリ(Khaled Islambouli)の手による裏切り者のエジプト大統領の画期的な暗殺」を描いたものだという。

 1981年10月6日、カイロ(Cairo)の軍事パレードに出席したサダト大統領は、イスラム過激派組織のメンバーだったイスランブリの凶弾に倒れる。イスランブリは翌82年に絞首刑を受けたが、イランの首都テヘラン(Tehran)にはその後、彼の名前を冠した通りが出現した。

 映画は、サダト大統領が1978年のキャンプデービッド合意により、翌79年にアラブ世界では初めてイスラエルとの平和条約に調印したことが、殺害の原因だったと主張する。

 サダト氏の娘ロケヤ(Roqeya)さんは、「制作者は、事前に家族の許可を求めるべきだった。あのような誹謗中傷は強い反発を呼ぶだろう」と語った。また、甥(おい)で政治家のタラト(Talat)さんは、「この映画は、彼のイメージを傷つけるとともに歴史を改ざんしようと企んだもの」と憤った。

 イランはエジプトのイスラエルとの平和条約調印、イランのパーレビ国王の亡命受け入れ、イラン・イラク戦争時のイラク支援を非難し、1980年に断交したが、今年1月にはエジプトのホスニ・ムバラク(Hosni Mubarak)大統領とイランのゴラムアリ・ハダドアデル(Gholamali Haddad-Adel)国会議長(当時)が会談するなど、国交再開に向けた動きが広がっている。(c)AFP