【3月15日 AFP】ドイツ南西部カールスルーエ(Karlsruhe)の連邦憲法裁判所は13日、知的障害のある実の妹と家庭を築いたドイツ人男性の弁護団による、近親相姦を禁じる法律の破棄を求める訴えを却下した。

 訴えていたのはパトリック・ステュービング(Patrick Stuebing)さんの弁護団。ステュービングさんは2000年、別々に暮らしていた妹のスーザン・カロリュースキ(Susan Karolewski)さんと出会い、それ以来関係を続け、カロリュースキさんはステュービングさんの子どもを4人出産している。

 ドイツの法律で近親相姦は2年以下の禁固刑と定められていることから、ステュービングさんはすでに2年間の服役刑を終えている。 

 ステュービングさんの弁護団は、2人が合意の下行った性的関係を違法とする現在の法律は破棄されるべきだとして、ドイツ東部ザクセン(Saxony)州裁判所に訴えた。今回の訴えは実に3回目となる。

 しかし裁判所は、近親相姦を禁じる法律は、「家族関係における弱者保護と近親交配を避ける目的で設けられた正当な法律」と判断し、弁護団の訴えを退けた。

 ステュービングさんは1976年、旧東ドイツのライプチヒ(Leipzig)で産まれたが、家族は崩壊状態だったという。父親がアルコール中毒で暴力を振るったため、ステュービングさんは3歳のときに児童養護施設に引き取られ、後に他の家族の養子となった。

 その後、24歳だった2000年にライプチヒの母親を訪ね、8歳年下の妹、カロリュースキさんと出会った。2人の交際は1年後に妹がステュービングさんの子どもを出産するまでは極秘だった。カロリュースキさんはステュービングさんの子どもを4人出産しているが、うち2人は障害があるという。

 失業中のステュービングさんは、現在も妹と別れることを拒否しており、現在も係争中の4人目の子どもが生まれた際の裁判で有罪となれば、再び2年間の服役刑に処せられる恐れがある。

 裁判によってステュービングさんと妹はドイツで知らない人はいない有名人となった。似通った面立ちの2人の写真が雑誌を飾り、新聞は2人が互いへの熱い思いを語るインタビューを掲載するなどして、ドイツ国民の同情を集めている。

 シュピーゲル(Spiegel)誌が掲載したステュービングさんのインタビューによれば、当初プラトニックだった2人の関係は、2000年12月に母親が死去したことから変化したという。それまでに2人は兄弟3人を失っており、2人だけが残されたとの思いから愛情が深まっていった。

 南西部フライブルク(Freiburg)のマックスプランク研究所(Max Planck Institute)の調べでは、ドイツ国民の2-4%が近親相姦の経験があるとみられるが、多くの場合は親による子どもへの性的虐待だという。

 欧州諸国における近親相姦の扱いは様々だ。

 フランスでは、近親相姦は犯罪とはみなされないが、子どもたちを家族の虐待から保護するための法律が設けられている。

 スペイン、ポルトガルでは、双方の合意があれば成人した兄弟姉妹間の性行為は処罰の対象とはならない。しかし、英国、デンマーク、ギリシャ、ハンガリー、ポーランド、スウェーデンでは違法とみなされる。(c)AFP