【9月20日 AFP】大相撲秋場所が行われている両国国技館で19日、中年女性が観客席から土俵に乱入する事件が発生した。この前代未聞の事件を受けて日本国内では、相撲の伝統が破られたのではないかとする声が多く挙がっている。

 19日のテレビ放送では、ブルージーンズと緑のTシャツを着た中年女性が観客席から乱入し足を掛けて土俵内に上がろうとした場面が映し出され、会場内では一時騒然となったが、審判を務めていた親方や出番待ちの力士らが女性を土俵から引きずり降ろして取組は再開された。乱入した女性はその後、近くの警察署に連行されたが、聴取後に解放されている。

 この事件を受けて日本相撲協会(Japan Sumo Association)のスポークスマンは「彼女が起こした事件は望ましいことではないが、幸いにも彼女は土俵に入りませんでした」と声明を発表し、何世紀にも渡り守られてきた「土俵内は女人禁制」とする相撲界の伝統が破られていないことを強調した。また、日本相撲協会も「我々は彼女が土俵に上がったと考えていない」との見解を示し、土俵に乱入した女性に対して法的措置を取らないとした。

 これに対して日刊スポーツ(Nikkan Sports)は、「確かに彼らは女性が土俵に上がるのを防ぎ、その後の取組にも支障をきたさなかったが1400年の相撲の歴史は壊された」と相撲の伝統が破られたと報じた。

 日本の国技となる相撲は、以前から神道信仰と大きく関連しており、女性に対しては19世紀後半まで観戦すら許されなかったという歴史が存在している。日本相撲協会は、以前にも女性政治家が優勝者に対して土俵上で優勝トロフィーを渡すことを拒否し、代役の男性に優勝トロフィーを渡させるなど「女人禁制」の伝統を守ってきた。

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