【3月15日 AFP】どこからともなく突然わき上がってくる「熱」の耐えがたい感覚――これは米軍当局が今週発表した電磁波を利用する最新の非殺傷兵器「アクティブ・ディナイアル・システム(Active Denial SystemADS)」の効果である。

 バージニア(Virginia)州クアンティコ(Quantico)の米海兵隊基地で行われたメディア向け体験会で、米海兵隊のトレーシー・タフォラ(Tracy Taffola)大佐はこの新兵器について「見えないし、聞こえない。そしてにおいもない。ただ感じるだけだ」と語った。

 同大佐によると、開発に15年を要した「アクティブ・ディナイアル・システム」の電磁波は強力で、有効な距離は1キロと長いが、非殺傷兵器としては最も人体に影響が少ない。2010年にアフガニスタンで短期間配備されたことはあるが、作戦の中で使われたことはない。

■周波数がカギ

 ADSの技術は、食品を温める際に使われる電子レンジのマイクロ波と混同されて、しばしば安全性に懸念が示されてきた。しかし、タフォラ大佐は、これが不快を与えるだけのものである点を明確にしておきたいと強調する。

 傷を負わせるか、極度の不快感を与えるだけかの違いは、その周波数にある。

 電子レンジのマイクロ波は調理する肉などに深く浸透するが、ADSが照射する95ギガヘルツの電磁波は皮膚の表面から0.4ミリ程度までしか到達しない。従って電子レンジの約100倍の威力を持つADSのビームでも、ポップコーンを作ることはできないという。

 ADSの人体への影響を研究してきた米空軍研究所によると、これまで人に対してADSのビームを1万1000回以上照射したが、治療を要した負傷は2例のみで、いずれも後遺症を残すことなく完治したという。

 ADSの使途について、米軍当局は、暴徒の排除、検問所や国境周辺での警備、立ち入り禁止区域の管理、さらにはインフラの防衛など広い範囲での利用を考えている。(c)AFP/Mathieu Rabechault

【動画】米軍の新しい非殺傷兵器「ADS」とは?(YouTube/AFPBB News公式チャンネル)