【10月19日 AFP】国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)は、英語とインターネットのグローバルな広がりを利用してサイバーテロのツールとし、非アラブの支持者をつかもうとしている。

 イエメンを拠点とするアルカイダ系組織の「アラビア半島のアルカイダ(Al-Qaeda in the Arabian PeninsulaAQAP)」は7月、初めての英語の雑誌「インスパイア(Inspire)」を発行し、爆弾製造方法などを解説した。

 前週ウェブで発行されたインスパイア第2号は全74ページ。西洋諸国のイスラム教徒に対し、スポーツ多目的車(SUV)に鉄の刃を溶接する方法や、そのSUVで群衆に突進する方法を説明している。

 AQAPは、インスパイアを通じて若い西洋人をジハード(聖戦)戦士にリクルートし、無差別攻撃を奨励したい考えだ。

■テロ組織からの変ぼう?

 米南カリフォルニア大学(University of Southern CaliforniaUSC)教授で「Global Terrorism and New Media(グローバルテロリズムとニューメディア)」共著者のフィリップ・セイブ(Philip Seib)氏は、テロネットワークはメディア組織に変ぼうしたと語る。

 セイブ氏は「もはやアルカイダは、メディア活動をするテロ組織というよりもテロ活動をするメディア組織と考えるべき時かもしれない」と指摘する。

 アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ(Dubai)拠点のシンクタンク、「湾岸研究センター(Gulf Research Centre)」の安全保障専門家、ムスタファ・アラニ(Mustafa Alani)氏は、「これは(アルカイダの戦略)転換だ」と語る。

「かつては非アラブ読者のことなど気にも止めていなかった。(これは)グローバルなリクルート活動を目指したグローバル戦争の新たな側面だ」

 かつてアルカイダは民兵を「輸出」していたが、今は「輸入」するようになった。また、インターネットで人びとに「情報を提供」していたが、今は「リクルート」に使うようになった。こうアラニ氏は指摘する。

■グローバル戦略支える2人の米市民

 この新戦略のなかで中心的な役割を果たしていると目されているのは、アルカイダとつながりを持つ2人の米国市民、アンワル・アウラキ(Anwar al-Awlaqi)師と、サミル・カーン(Samir Khan)氏とみられている。両者ともにイエメンに暮らしているとみられる。

 39歳のアウラキ師はイエメン系米国人の聖職者で、米テキサス(Texas)州フォートフッド(Fort Hood)陸軍基地で13人が死亡する銃乱射事件を起こしたニダル・マリク・ハサン(Nidal Malik Hasan)被告や、09年12月25日に米デトロイト(Detroit)上空で発生したノースウエスト航空(Northwest Airlines)機爆破未遂事件の被告のナイジェリア人ともつながりがあるとされている。

 英語を流ちょうに話すアウラキ師は欧米人のリクルートに熱心で、米国のイスラム教徒たちにハサン被告の後に続けと呼びかけるビデオを前年5月に公開していた。バラク・オバマ(Barack Obama)米政権は、米市民に対するものとしては異例の殺害許可を出している。

 アルカイダの新戦略の背後にいるとみられるもうひとりの人物、カーン氏はパキスタン系米国人。米情報当局は、ニューヨーク(New York)にある両親の自宅の地下からインターネットを使った活動を行っていたこともあるとみている。

■世界中からジハード戦士を募集、対抗策は?

 アルカイダはグローバル戦略に国境を問わないコミュニケーション手段を選び、世界のどこからでもジハードに加わるよう呼び掛けている。

 インスパイア誌は、アルカイダの電子メールアドレスを多数掲載している。中にはマイクロソフト(Microsoft)の電子メールサービス、ホットメール(Hotmail)のメールアドレスもある。電子メールを送る前には「情報当局による特定を防ぐために」暗号化ソフトウエアをダウンロードするようにとの注意書き付きだ。

 セイブ氏は、アルカイダ系組織が「認知度を拡大しようとしている。そのための合理的な方法は英語で行うことだ。そしてそれは成功していると思う。非常に低いコストで大きな注目を集めている」と述べた。

 セイブ氏は、アルカイダの脅威拡大を抑え込むためには「各国政府はテロリスト組織と同じくらい効果的にニューメディアを使うように取り組まなければならない」と述べ、「相手の情報に対しては、自分たちの情報で戦うしかないのだ」と語った。(c)AFP/Lynne Nahhas

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