【3月10日 AFP】英国・北アイルランドの英陸軍基地で兵士2人が死亡した襲撃事件では、カトリック過激派アイルランド共和軍(Irish Republican ArmyIRA)の分派「真のIRA(Real IRA)」が犯行声明を出したが、この「真のIRA」の脅威は、北アイルランドの民兵組織を監視する独立国際武装解除監視委員会(Independent Monitoring CommissionIMC)の最新報告書のなかでも指摘されていた。

 IMCは、前年11月に発表した半期報告書のなかで、「『真のIRA』は依然として北アイルランドの深刻な脅威として存在し、犠牲をもたらす活動を続ける可能性がある」と警告している。

「真のIRA」は1997年10月、武装闘争を停止し和平プロセスへに加わったIRAの方針に反発したIRAメンバーが中心となって結成された。

 IRAは、1998年4月10日の包括和平合意(いわゆる「聖金曜日の合意(Good Friday Pact)」)により武器の完全廃棄を表明したが、「真のIRA」はこれを「裏切り行為」と厳しく非難している。

 現在、北アイルランド自治政府で政権を担うIRAの政治組織「シン・フェイン(Sinn Fein)党」から分派したのが、「真のIRA」の政治組織「32州統治運動(32 County Sovereignty Movement)」だ。

「32州統治運動」は、獄中で英統治に対するハンガーストライキを続け1981年に衰弱死したIRAメンバー、ボビー・サンズ(Bobby Sands)受刑者の妹のバーナデット・サンズ(Bernadette Sands)氏が始めた。

「真のIRA」創設時のメンバー数は100人から200人程度とみられ、分派前にIRAで爆弾製造に関わっていたメンバーも参加している。

 1999年には、最新式のロケット式手りゅう弾発射装置を、東欧経由で入手し、2000年9月20日にロンドン(London)中心部の英秘密情報部(Secret Intelligence ServiceSIS、通称MI6)本部攻撃の際に用いられた。攻撃による負傷者はいなかった。

 だが、組織の指導者、マイケル・マクケビット(Michael McKevitt)が2001年3月に逮捕され、「真のIRA」は大きな痛手を負った。しかし、同組織は2002年7月、攻撃続行を表明している。

 一方、マクケビット被告はアイルランド・ダブリン(Dublin)の裁判所で2003年8月、テロ行為を指揮した罪で20年の禁固刑判決を受けている。

 しかし、今、再び「真のIRA」の脅威が増長するなか、IMCは「真のIRA」内には少なくとも2つの党派が存在するとみている。(c)AFP