【8月12日AFP】米国防総省高官は11日、グルジア・南オセチア(South Ossetia)自治州へのロシア軍進攻のタイミングとその迅速さについて米軍も意表を突かれたと話し、発生した事態について分析中だと述べた。

 ロシア軍は前週、グルジアからの分離独立を求める南オセチア州に進軍した。それ以前、両国間の脅迫や警告、衝突は数週間にわたって続いていた。6日にグルジア軍が南オセチア部隊と交戦、2日間にわたり同自治区に進攻し、ロシアとの緊張も最高に達した。

 米国防総省幹部らは、グルジアとロシアの衝突は予測されていたが、圧倒的なロシア軍の攻勢は想定外だったと述べた。ある米軍高官は「その週の前半にはロシア軍の動きを監視していたので、事態の激化は把握していた。しかし、初日のロシア軍の動きは、われわれの予想よりも迅速だった」と言う。

■米軍の最新鋭偵察システムをもっても予測できず

 しかし、事態がどのように展開したのかについては、両国の主張が食い違っているため、依然として不明瞭な点が多い。

 グルジアの高官たちは、グルジア軍が首都トビリシ(Tblisi)に向かって撤退している間に、ロシア軍が南オセチアからグルジア領内へ移動し、ゴリ(Gori)を制圧したと述べている。

 しかし、米国防総省高官は、グルジア側のこの主張は確証が取れないと述べた。「ロシア軍がゴリに駐留していることを示す証拠は見あたらない。グルジア側がなぜそのような主張をしているのか見当がつかない」。米国防総省のブライアン・ホイットマン(Bryan Whitman)報道官は「その件の評価は、現在進行中」だとして見解を明らかにすることを避けている。

 米国は、各国の軍事衝突に向けた準備段階の行動を監視するために、スパイ衛星や偵察機、無線電波や地上軍部隊のリアルタイム画像を収集する無人飛行機など、世界でも最先端の手段を有している。しかし今回、遠隔地で発生した対立から軍事衝突に発展する過程をどの程度までとらえる訓練ができているかについては、よく知られていない。

 一方、ロシア軍は3日、グルジア政府と南オセチア自治州との間で「大規模な軍事衝突」の危険性が高まっていることを警告していた。

■ロシア軍は7月に北カフカスで8000人軍事演習

 米国防総省は5日、ロシアに対して挑発的な行為を抑えるよう要請する声明を控えめに発表していた。しかし、直近にグルジアあるいはロシアが軍事行動を起こす可能性について、米国側が察知していることを示唆するような情報はなかった。

 米国防総省幹部は、戦闘は差し迫った脅威ではないとみなしていた。こうした米側の認識は、グルジアに米軍兵士95人と民間軍事会社の派遣した要員35人しか駐留させていなかった点からうかがえる。また、これらの部隊や要員は、イラクへ派遣するグルジア軍兵士の訓練のためで、駐留地は南オセチア付近ではなかった。

 7月中旬には米軍兵士1650人がグルジア軍と合同訓練を実施したが、グルジアとロシアの対立が過熱したころには米軍はすでにグルジア国外へ退去していた。

 一方、同時期にロシア軍は、対テロ軍事演習として北カフカス(North Caucasus)に兵士8000人を展開していた。同演習についてロシア側は、南側国境に隣接するグルジアとの緊張の高まりとは無関係だとしていた。

■「ロシア軍の進軍能力、予想以上」と米分析

 米国防総省高官によると、今回これまでに南オセチアに進攻したロシア軍兵士は8000-1万人、またロシア軍の戦闘機や爆撃機SU-25、SU-24、SU-27、TU-22などが出動した。

 しかし同高官は、ロシア軍の進攻準備を示すような国境沿いでの部隊集結はなかったと述べる。「これを根拠にすれば、ロシア軍は迅速な進軍が可能であり、ただ単にそれを実行するか否かの問題だったということになる。国境沿いに軍を集結し待機させていたわけではなかった」(米国防総省高官)

 また同高官は「ロシアの今後の計画についてはわからない。明らかなことは、必要であればさらに部隊を増派できるということだ」と述べた。(c)AFP/Jim Mannion