【6月13日 AFP】 米政府が個人の電話記録やインターネット利用を極秘裏に監視していた事実を暴露した元米中央情報局(CIA)職員のエドワード・スノーデン(Edward Snowden)氏(29)は12日、数日間の沈黙を破り香港(Hong Kong)の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(South China Morning PostSCMP)とのインタビューに応え、米政府が世界中の数万の標的を対象にハッキングを行ってきたと明かした。標的には中国内のものが多く含まれているという。また同氏は、香港からの引き渡しを試みるいかなる動きとも闘うと誓っている。

「僕は裏切り者でも英雄でもない。アメリカ人だ」と語ったスノーデン氏はこの2日前、香港市内のホテルをチェックアウトして以降、行方をくらましていた。

 外部からの出向職員として米国家安全保障局(National Security AgencyNSA)に勤めていたスノーデン氏については、NSAが運用する監視プログラムを暴露した勇敢な内部告発者として称賛する声も上がっている。一方で米政府は、同プログラムは米国人をテロから守るために必要な活動だとしており、米議員の多くはスノーデン氏の行為を卑劣な裏切り行為だと非難している。

 SCMP紙が伝えた同氏の発言によると、NSAは過去に世界中で6万1000件以上のハッキングを実施してきた。標的となったのは、数十万台の個人コンピューターへのアクセスを許可できる強力な「ネットワーク・バックボーン(高速大容量回線)」で、うち数百が中国本土と香港のものだという。

 スノーデン氏の主張が事実ならば、米カリフォルニア(California)州で先週末に行われたバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領と習近平(Xi Jinping)中国国家主席との首脳会談で示された、米中間の信頼構築の新たな試みを脅かすことになる。

 スノーデン氏によると米政府は、金融と通商の中心である香港でNSAが行っているとされる通信収集活動の詳細が暴露される前に、同氏の身柄を引き渡すよう香港当局を「脅そうとしている」という。

 だが同氏は、香港市内某所で行われたというSCMP紙とのインタビューの中で、「香港から逃げ出す機会はたくさんあったが、ここにとどまり、米政府と法廷で闘うほうがいい。香港の法を信頼しているから」と述べ、香港からの引き渡しを試みるいかなる動きとも闘うと誓った。

 米司法省はすでに刑事捜査に乗り出しているが、米政府は香港に対し、正式な身柄引き渡し要求をまだ行っていない。(c)AFP/Jitendra JOSHI