【11月20日 AFP】ハリウッド映画に登場するような、人間の命令なしに人を撃ち殺すことのできる自律型ロボットは現実に実用化が可能であり、各国政府が実戦配備を始める前に禁止するべきだ――。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights WatchHRW)とハーバード(Harvard)大学法科大学院の国際人権クリニック(International Human Rights Clinic)が19日、このように警告する報告書を発表した。

「失われつつある人間性(Losing Humanity)」と題された50ページの報告書は、実現間近の技術をめぐる倫理の問題に警鐘を鳴らし、「完全に自律稼動する『殺人ロボット』の開発、製造、使用を絶対的に禁止する国際条約」の制定を強く求めている。

 軍事ロボット技術をリードする米国は既に、パキスタン、アフガニスタン、イエメンなどで無人機や無人車両による偵察・攻撃を行っている。これらはいずれも人間が遠隔操作しており、オペレーターの指令なしで攻撃することはない。

 しかし、人間の操作がより少なくて済む兵器も導入が進んでいる。たとえば米海軍艦船には敵のミサイルを自動的に認識して迎撃するシステムが搭載されているし、次世代無人爆撃機X47Bは自動で発着艦や給油を行える。また、韓国サムスン電子(Samsung)が開発し同国内で実用化されている歩哨ロボットは、異常を察知して侵入者に話しかける。銃撃こそオペレーターの判断が必要になるが、現時点で最も「ターミネーター」に近い存在といえる。

 報告書は、自ら判断して攻撃する完全自律型ロボットが20年~30年以内、もしくはもっと近い未来に開発されるだろうと予測している。

 HRWのスティーブ・グース氏は、「米国を始めとした各国政府は、兵士を戦場から遠ざけ、代わりにロボットを投入して戦死者を減らす計画を非常に張り切って進めている」と指摘。ノーベル平和賞受賞者のジョディ・ウィリアムズ(Jody Williams)氏は、こうした自律型兵器の開発が「市民の議論を一切経ずに進んでいる」点を非難している。(c)AFP/Sebastian Smith