【11月30日 AFP】ロシアのオンラインメディアやブログ上では今、激しい当局批判の声があふれ、国営メディアが報じない政治スキャンダルや腐敗が暴露されている。

 ロシアはインターネットの普及が遅れていたものの、今年9月についにドイツを抜いて欧州で最もインターネット・ユーザーの多い国になった。米調査会社コムスコア(comScore)によると、ロシアの15歳以上のインターネット人口は5080万人に達している。

 ロシア国民の主要な情報入手源は依然として、政府中心のニュースが多い国営テレビだ。だが、ニュースの大半をインターネットで得ているロシア人も全体の4分の1に近い24%に上っている。露連邦通信局のミハイル・セスラビンスキー(Mikhail Seslavinsky)局長は今月「24%というのは大変深刻な数字だ」と述べた。同局長によると、インターネットで何らかのニュースを読んでいる人も含めると53%に上っている。

■ブロガーの与党批判スローガン、爆発的に広まる

 インターネットの利用拡大とともに政権を厳しく批判するブロガーたちが増えており、与党・統一ロシア(United Russia)にとって問題になり始めている。

 国営企業の腐敗告発ブログで知られるアレクセイ・ナワリヌイ(Alexei Navalny)氏が作った統一ロシアのスローガン「詐欺師と盗人の党」は爆発的に広まり、いまでは車の窓にスローガンの入ったステッカーが貼られるほどだ。

 政治評論家でモスクワメディア研究センター(Moscow Centre of Media Studies)所長のアレクサンドル・モロゾフ(Alexander Morozov)氏は「テレビや出版などインターネット以外のメディアを使うことなく、ナワリヌイ氏はインターネットだけを使ってスローガンによる介入を遂行した。そのスローガンが今や、国民数百万人の統一ロシアに対する認識を決定づけている」と述べた。

 また今月、モスクワ(Moscow)のオリンピスキ(Olimpiisky)スタジアムで行われた総合格闘技の一戦が話題になった。リングにあがって演説を始めたウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)首相に対し、観客がブーイングをする様子がテレビで生中継されたのだ。

 国営テレビのニュースではブーイングが編集で削除されていたが、米動画サイト「ユーチューブ(YouTube)」に投稿された動画は、すでに270万回以上再生された。

■ネットの及ぼす影響は

 露独立系紙ノーバヤ・ガゼータ(Novaya Gazeta)のコメンテーターで、率直な発言で知られるユリア・ラチニナ(Yulia Latynina)氏はこの出来事について「私が約1年前に書いたことが現実になってきた。体制がインターネットを滅ぼすか、さもなくばインターネットが体制を滅ぼすだろう」と語った。

 一方、他のコメンテーターらは、インターネットが投票行動に及ぼす影響については、慎重な意見だ。「インターネットとソーシャルメディアはただの道具だ。最も重要な要素は都市部の新中間層の立場と、議会野党の意図だ」とモロゾフ所長は語る。

 反対派活動家でブロガー、ジャーナリストのロマン・ドブロホトフ(Roman Dobrokhotov)氏は、選挙結果についてはかなり懐疑的だと語る。だが、インターネットは政治への幻滅を示す指標になると述べ、「プーチン氏がオリンピスキでブーイングを受けたことや、一般市民の間でプーチン氏に対する不満が高まっていることから、大きな転換点になると思っている。インターネットはその道具の1つだ」と語った。(c)AFP/Anna Malpas

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