【11月9日 AFP】バラク・オバマ(Barack Obama)次期米大統領がジョージ・W・ブッシュ(George W Bush)政権の欧州ミサイル防衛(MD)システム計画を推進するかについて憶測が飛び交うなか、専門家はロシアが対抗措置としてミサイルを配備すると警告したことで墓穴を掘ったとの見方を示した。

 専門家はこの警告は粗雑なレトリックに過ぎず、オバマ氏が大統領に就任する1月20日から半年は正念場は訪れないとみている。むしろ、米国初の黒人大統領の誕生と8年間のブッシュ政権の終わりを世界中が祝福するなか、敵対的な発言でロシアは自らの罠に落ちたと解説する。

 オバマ氏が5日に当選を決めた数時間後、ロシアのドミトリー・メドべージェフ(Dmitry Medvedev)大統領は、旧ソ連領における米国のMD計画に対する対抗措置としてリトアニアとポーランドの間のロシアの飛び地カリーニングラード(Kaliningrad)に短距離ミサイル「イスカンダル(Iskander)」を配備する計画を発表した。

 ポーランドのレフ・カチンスキ(Lech Kaczynski)大統領はその後、オバマ氏が電話で「MD計画を推進する」と語ったと述べた。8月14日に署名された合意にでは、ポーランドに迎撃ミサイル10基を配備することになっている。

 しかしオバマ氏の外交政策顧問Dennis McDonough氏はポーランド大統領との会談でオバマ氏はミサイル防衛について「確約しなかった」と述べた。McDonough氏は「この問題に関するオバマ氏の見解は、選挙期間中一貫して主張してきたように、MDが技術的に実行可能だと証明されれば導入を支持するというものだ」と述べた。

 ポーランドの迎撃ミサイル配備とチェコのレーダー施設建設について米政府は、イランのような「ならず者」国家を標的にしており、ロシアを脅かすものではないと説明しているが、ロシアは自国の安全保障上の脅威だと述べている。

 防衛情報センター(Center for Defense Information)のTheresa Hitchens所長は、メドべージェフ大統領の警告は逆効果で、オバマ陣営はMDについて本来考えていたよりも強硬な姿勢を取らざるを得なくなるだろうと述べる。「ロシアが本当にミサイル関連施設を懸念しているならば、ロシアの対応は実に愚かだったといえる」と語った。(c)AFP/Lachlan Carmichael