【ルクセンブルク 20日 AFP】欧州連合(EU)は19日、扇動的な人種差別を同連合の加盟全27か国で犯罪とすることに合意した。EU各国の代表が述べた。

 この法案では、民族、人種、宗教や出自などを理由とした暴力や憎悪を伴う差別行為を大衆に扇動した場合、1~3年の禁固刑が科される。また、パンフレットや写真などによる扇動も禁止される。

 この法案は、ホロコースト(Holocaust、ユダヤ人大量虐殺)を否定する行為の禁止を望むドイツとの約6年に及ぶ論争の末、ようやく合意した。ホロコーストを否定する行為の禁止は、ドイツでは1985年に法制化されナチスの紋章の使用も禁止されている。また、ドイツ政府は今年6月にEU議長を退く前に、その法案を成立させたい意向だった。

 加盟国は公共の秩序を乱した場合、またはその行為が脅迫的で侮辱的な場合のみ刑罰を科すことができる。

 ただし、英国、アイルランド、北欧諸国は言論の自由が妨げられると懸念しているため、ホロコースト否定については、それが憎悪を煽るような場合のみEU全域で適用されるルールの下で制限される。オーストリア、ベルギー、フランス、ドイツ、ポーランド、ルーマニアではすでに法整備されている。

 写真は19日、欧州委員会(European Commission)のフランコ・フラティニ(Franco Frattini)副委員長(司法・自由・治安担当)と記者会見に臨むブリギッテ・ツィプリース(Brigitte Zypries)独法相。(c)AFP/JOHN THYS