【4月18日 AFP】フランスで先週、末期がん患者を病院に搬送中の救急車の運転手が心臓発作を起こしたため、患者が代わりにハンドルを握って病院まで運転し、運転手の命を救っていたことが17日、病院関係者の話で明らかになった。

 仏北部の町ランス(Lens)の病院のフレデリック・アリアンヌ(Frederic Allienne)救急救命室長がAFPに語ったところによると、このがん患者は海沿いの町ベルクシュルメール(Berck-sur-Mer)在住のクリスチャン・ナイエ(Christian Nayet)さん(60)。11日、救急車を運転して同病院に運転手を運び込んだ。

 仏紙ボワ・デュ・ノール(Voix du Nord)によると、ナイエさんは定期検査のためリール(Lille)市内の病院に向かっていたところだったという。ナイエさんは同紙に当時の状況を次のように語っている。

「私は運転手にこう言いました。『私を信用して、キーを渡してくれ!私の命は危険にさらされていないが、あなたの命は危うい!』」

「どうやってサイレンを鳴らすのかは分からなかったけれど、警告灯はつけることができました。彼(運転手)に窓から腕を出して、他の車に合図してくれと頼みました」。他の車はすぐに道を開け、ナイエさんの救急車を通してくれたという。

 運転中、ナイエさんは運転手に対し、血栓症を起こさないようにする抗凝固処置も施したという。ナイエさんの助けがなければ運転手は「死んでいたかもしれない」と、アリアンヌ救急救命室長は話している。

 ナイエさんは運転手を救急救命室に運び込んだ後、他の病院へ搬送され定期検査を受けたという。(c)AFP