【2月12日 AFP】恋人と別れたいが、別れを切り出す勇気がない? それならば、ベルリン(Berlin)で会社「セパレート・エージェンシー(Separation Agency)」を営むベルント・ドレスラー(Bernd Dressler)氏にお願いしよう。「別れさせ屋」の彼なら、静かに、そして効率的に、嫌な仕事を引き受けてくれる。

 バレンタインデーも近いある日のこと、ドレスラー氏はベルリンの飾り気のない事務所で、AFPのインタビューに応じてくれた。上品な雰囲気を漂わせ、年齢は50代といったところ。仕事の手順を淡々と説明してくれた。「ドアをノックして、自己紹介し、わたしの依頼人があなたと別れたがっていると伝えます。所要時間は2分、しかも玄関先で済みます」
 
 ドレスラー氏は感傷的になるタイプではない。涙やヒステリーもなし。単なる仕事だ。「わたしはただのメッセンジャーです。関係を終わらせるのは自分ではなく、わたしを雇った依頼人なのですから」 

 もともと保険会社に勤めていたドレスラー氏は3年前、米国で活況を呈するデートビジネスにヒントを得て、その真逆の別れさせ屋をオンラインで起業した。

 料金は前払い。依頼人はまず全4ページの契約書に、別れたい理由を3~4個ほど詳細に記載しなければならない。これは後で相手の当該人に見せ、「冗談」ではないことを分からせる上でも役立つという。

■4段階の値段設定

 依頼人は以下の4つの値段設定のサービスの中から選ぶことができる。

―「Let's be friends(友達でいましょう)」コース:29.95ユーロ(約3700円)。相手にとって「悪い知らせ」を電話でドライに伝える。

―「Leave me alone(わたしをほっといて)」コース:上と同額。2度と連絡してほしくないという強い意思を相手に伝える。

―「Break-up by letter(手紙でお別れ)」コース:39.95ユーロ(約4900円)。別れの手紙をドレスラー氏が書き、相手に送る。

―デラックス版「Personal break-up(代理人によるお別れ)」コース:64.95ユーロ(約8000円)。予告なしでドレスラー氏がじきじきに相手宅を訪問し、別れる意思を本人に伝える。

 別れの言葉の口調についても、「強く言う」「優しく言う」などから選択できる。

■「この世は使い捨て社会」

 ドイツは、離婚率が57%の離婚大国だ。そのため「離婚ビジネス」は花盛り。デュッセルドルフ(Duesseldorf)では今年、離婚専門の弁護士から財務コンサルタント、独身者デートサイトの運営人、栄養士までが集うドイツ初の「離婚フェア」も開催される。

 ドレスラー氏に依頼してくる人は、主に18歳から35歳。圧倒的に女性が多いという。「個人的には、別れるために誰かを雇うなんてことはしません。世代の違いですかね。今どきの若者たちはやや無責任だと感じています」

「この世は使い捨て社会です。コーラを飲んだら缶を捨てるのと同様に、パートナーに魅力を感じなくなったらポイ捨てして、新しい誰かを見つけるというわけです」・・・ドレスラー氏は悲しげに微笑んだ。

 ドレスラー氏の事業は拡大している。新たに、依頼人に代わって謝りたい人に謝るという「謝り屋」ビジネスを始めたということだ。(c)AFP/Yannick Pasquet