【12月31日 AFP】コルク栓の抜ける軽やかな音が新年の訪れを告げたとき、シャンパン好きな人なら、「型破りな」方法で飲んでみるのもいいだろう。

 シャンパンといえば、グラスは長い脚がついたフルートグラスか、皿のように広がったクープグラスが伝統だが、「本当の通」ならば、こうした「古めかしいグラス」を捨て去るべきだと勧めるワイン評論家が登場している。

 さらにアバンギャルド志向派には、シャンパンのデキャンタ、カラフェからシャンパンを注ぎ、立ち昇る繊細な泡を楽しむのも乙だという。

 その故郷フランス北東部シャンパーニュ(Champagne)地方の町ランス(Reims)で、歴代フランス王の戴冠式が行われていたときから、シャンパンは祝いごとと結びつくぜいたくな飲み物というイメージをもち続けてきた。

 しかし19世紀になるころには価格が下がり、「手の届くぜいたく」となって人気が広まる。1800年には年間30万本だった生産量は、1850年には2000万本に急増。2008年は、4億500万本が生産された。

 最近になってシャンパン生産者たちは、シャンパンが祝いのための飲み物であるだけではなく、非常に繊細なワインでもあるということを消費者に思い起こさせる提案を仕掛けている。


■伝統のグラスはシャンパンに適さない?

 パリで開かれた恒例のワイン・フェアでは今年、従来のシャンパン・グラスは必ずしも適さないという主張が口々に語られた。

 フランスのワイン評論家ミシェル・ベタンヌ(Michel Bettane)氏とティエリー・ドゥソーブ(Thierry Desseauve)氏が主催するこの大会でグラスが使われたオーストリアの高級グラス・メーカー、リーデル(Riedel)のフィリップ・ギロン(Philippe Guillon)氏は「クープグラスなど話にならない。香りの立ち上りもアロマもない。それでは楽しみは半減だ。シャンパンにはまったくお勧めしない」と断言する。

 泡のクオリティはグラスの広さ、タンニン味や酸味、苦味のバランスはグラスの直径、アロマはグラスの形に決定される。ギロン氏によるとシャンパン・グラスを選ぶトレンドは、普通のワイングラスに近い方向、さらには丸いピノ・ノワール用グラスにさえ傾きつつあるという。

 2007年の世界最優秀ソムリエコンクール(Best Sommelier of the World)、アンドレアス・ラーソン(Andreas Larsson)氏も「シャンパンに理想的なのは、普通のフルートグラスよりもわずかにボディが広く、しかし飲み口は狭めでフレーバーとアロマが強調されるグラス」だと語る。


■各メーカー、独自のグラスを開発

 「シャンパンの決め手はブレンド技術」だというシャンパンメーカー「ボランジェ(Bollinger)」の最高醸造責任者マシュー・カウフマン(Mathieu Kauffmann)氏は、40の異なる格付け畑から採れたブドウと200種類のワインを使う。ノン・ビンテージのシャンパンは、セラーにある膨大なリザーブから少なくとも5種類のビンテージをブレンドする。

 こうしたシャンパンの複雑さ、微妙さにフルートグラスやクープグラスでは役不足だとして、モエ・エ・シャンドン(Moet et Chandon)やヴーヴ・クリコ(Veuve Clicquot)、パイパー・エドシック(Piper Heidsieck)、ボランジェといった一流メーカーでは、自前のカスタム・グラスを作っている。

 ボランジェではすべての等級とグレート・ビンテージで、30種類のグラスを試したというカウフマン氏。生まれたのは、フルートとクラシカルなワイングラスを掛け合わせた形のグラスだった。

■「デキャンタ」も

 グラスの新提案は比較的受け入れられやすいかもしれないが、もっと議論を呼んでいるのが、カラフェで提供するかどうかだ。カウフマン氏は「最初はわたしも懐疑的だった」と認めながら、実験の価値はあると言う。

 支持派は、カラフェでの提供には今までになかった可能性があると言う。

 例えばギロン氏によると「まず何よりも、そのほうがよく開く。シャンパンもワインであることを忘れてはならない」のが1番目の理由だ。2番目に「ディナーにシャンパンを使うとき、デキャンタしておいたほうが余分な炭酸が抜け、消化に悪くない」と実質的だ。

 ラーソン氏はさらに具体的に語る。「まだ若い高品質のシャンパンを楽しもうと思ったら、そういうシャンパンはまだ開ききっていないので、優しくデキャンタするのはいいだろう。若いブルゴーニュ・ワインをデキャンタするのと同じ発想だ」。ただし古いものをデキャンタするのは、酸化しすぎたり泡が失われすぎるのでむいていないと言う。

 少なくともひとつの老舗が、デキャンタでのサービングを流行らせようとしている。シャルル・エドシック(Charles Heidsieck)はこの年末年始シーズン、自社の1995年のビンテージ、ブラン・デ・ミレネール(Blanc de Millenaires)用に手吹きガラス製の竪琴型のカラフェを提案している。このシャンパンが「完全に持ち味を発揮し、その並外れたアロマの複雑さがあらわにする」カラフェだと紹介している。(c)AFP/Suzanne Mustacich